異次元の金融緩和で、日本は再生するか? 日銀短観から読み解くアベノミクスの行方(下)

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アベノミクスによる「実力の経済成長」を見極めるためには

日銀が、4月4日の金融政策決定会合で、マネタリーベースを2倍に膨らますという「異次元の金融緩和策」を発表して以来、円相場や金利、株価の値動きが活発になっています。しかし、この一時的な株価上昇は、企業の実力が伴わない、ただの「ミニバブル」です。

金融緩和だけでは、バブルは起こせるかもしれませんが、経済を成長させることはできません。では、実質的に経済が成長しているかどうかを見極めるために、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

それは、企業の動向です。日銀が増やそうとしている「マネタリーベース」とは、日銀券(日銀が発行することのできるお金)と日銀当座預金残高(金融機関が日銀に預けている資金)の合計のことです。日銀が直接コントロールできる資金量はこの「マネタリーベース」だけ。日銀は、金融機関から国債などの資産を買い入れることで、金融機関にお金を入れます。こうして、世の中に資金供給を行うのです。資金供給量を増やすと金利が下がりますから、企業はお金を借りやすくなります。とくに、今回の量的緩和では、日銀は残存期間の長い国債の買い入れを行うので、長期金利が下がりやすくなります。

そこで、本当に企業が銀行からお金を借りるのかどうかが問題です。企業は、世の中の景気が良くなって、業績改善の見通しが立ち、国内での需要が増加すると考えると、設備投資を行おうと考えます。これが本当に起こるのかどうかに注目しなければなりません。

金融政策がうまくいって、こうした資金需要が増えてくれば、国内景気も本格的に上向いていくでしょう。経済成長を中長期的に維持するために、アベノミクス3本目の矢「成長戦略」が6月に発表されますが、こちらもあわせて注目しなければなりません。「異次元の金融緩和」と同じくらい、異次元の経済政策が出ることを期待します。なにせ、1991年よりも現状の名目GDPは低い状態が続いているのですから、余程の経済政策を打ち出さないと、中長期的に経済は拡大傾向には向かわないと考えるからです。

「黒田ショック」がミニバブルで終わるのか。それとも国内経済の成長のきっかけになるのか。こうした点をきちんと見極めることが肝要です。

小宮 一慶 経営コンサルタント

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こみやかずよし / Kazuyoshi Komiya

小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行う。著書に『「なれる最高の自分」になる方法』『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)など。

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