中国トップ経営者がハマる「毛沢東思想」

政治の「神」から経営の「神」へ

私たちが使っているモバイル通信機器(筆者の使っているイーモバイルのLTE通信端末も)でしばしば見かける「HOAWEI」の文字。これは中国・深せんに本社を置く世界最大級の通信会社、華為の製品であることを意味している。華為は日本ではそれほど有名ではないが、世界最大級の通信器機会社である。2012年の売り上げは3兆円に達し、世界140カ国に拠点を置いている。

「農村から都市を包囲」して、通信マーケットを攻略

その華為を1987年に創業した任正非氏は、中国の企業家の中でも名うての「毛派経営者」で知られる。任氏は軍人出身で、文革時代に紅衛兵として毛沢東思想を学習し、毛沢東語録を振りかざして運動に熱中した経験の持ち主だ。

自身も「私は毛主席の子供だった。暇さえあれば毛主席の著作を読んでいた」と当時を振り返っている。文化大革命のときにあった批判集会にヒントを得て、社員が自己批判するためのミーティングを社内でも開いているという。

任氏が創業したとき、北京や上海などの大都市では欧米系の通信会社にマーケットは完全に押さえられていた。このときに任会長が対抗策を考えつく発想の源になったのが「農村から都市を包囲する」という毛沢東の人民戦争理論だった。

任氏が取った作戦は、地方都市に対する営業に専念することだった。欧米系は知名度もあり、外装もよいが、価格が高く、サ-ビスもそれほど丁寧ではない。そこで華為は、北京や上海と比べて経済水準が低い地方都市に対しては、それなりの商品をそれなりのサービスで提供することで顧客をつかみ、企業の収益基盤を築いた。それから徐々に商品力を高め、欧米系に価格・質ともに負けない力を付けた。そして満を持して、欧米系の押さえていた大都市の市場も奪っていったのである。

現在は、その戦略を世界でも実行しつつあり、東南アジアや南アジアで優勢にビジネスを展開し、日本や欧米に攻勢をかけているのである。

元軍人の任氏は技術者ではないが、毛沢東を持ち出して、「毛沢東は銃を撃てるか? 誰も見たことがないのではないか? もし撃ったら自分の足を撃ってしまうに違いない。それでも毛沢東は群衆を動かし、幹部を動かすことができるではないか」と語っている。

次ページ毛沢東思想は、宗教そのもの
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • フランスから日本を語る
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • この新車、買うならどのグレード?
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT