「イノトランス」で中国の技術者たちは、展示されている車両から「情報を取れる機会には徹底的に取る」と、積極的に「爆チェック」を進めていた。
例えば、スイス製車両の自動連結器の寸法を測定したり、シーメンスが「ICE3」をベースに開発したトルコ国鉄向け「ヴェラロ・ターキー」の装備品の形状を数人がかりで細かく写真を撮影したり。過去のイノトランスでも中国の企業出展も見学者の来場もあるにはあったが、これほどまでに「露骨に」情報を得ようとする貪欲さを感じたのは今回が初めてだ。
「より速く、遠くへ乗客を運ぶ」という方針が中国をはじめとするアジアの国では依然として大勢を占めているようだが、鉄道業界のトレンドセッターとも言える欧州ではまったく違うことが起こっている。
中国はがっかり?欧州の高速鉄道は真逆の方向へ
「イノトランス」の開幕初日に発表された速報レポート「世界の高速列車のトレンドに発生した"異変”」でも概要が伝えられているように、今回は「会期中に各社の経営トップが示した高速鉄道車両の開発構想の中で、速度性能の向上に関する言及はほとんどなかった」。つまり欧州では明らかに「速度追求のための開発競争」の時代は終わったと見てよいだろう。
ちなみに今回の「イノトランス」で、営業最高時速300キロを超えられる車両は、前述のシーメンス製「ヴェラロ・ターキー」のみ。出展されたそれ以外の車両をざっと眺めると、明らかに欧州のトレンドは「速度追求をやめ、経済的かつ既存インフラをより活用して、最大の生産性を得る」という方向に転化している。つまり、世界最新鋭の技術をより多く取り入れて、より速く走らせようと切磋琢磨を止まない中国の状況と比べると、欧州の現状はまったく真逆で「そんなに速くなくて良いから、乗客を安くて適切な速度で確実に運ぶ」という流れに収斂しつつある。
中国の技術者たちは「2年前は400キロ超で走れる化け物列車(伊アンサルドブレダ、現・日立レールイタリアが生産する「フレッチェロッサ1000」)が出たから、今回はもっとすごいものが出てくるに違いない」と張り切ってはるばるドイツまでやって来たのかもしれないが、その期待は大きく外れた格好となったようだ。
ドイツ国鉄(DB)は2011年、「ICx」なる国際高速列車にも在来線の急行列車にも使えるオールマイティ車両の導入に向け、シーメンスと契約を結んだ。
最終的に「ICE4」と名付けられたこの車両は、「イノトランス」には出展されなかったものの、今年末までにDBの路線に投入される見通しで、今年9月にはベルリンでお披露目運転が行われている。
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