「開幕から4日間、ずっと会場内を歩き通したけれど、すべての展示内容を見尽くすのは無理だった……」
ドイツのベルリンで開催された鉄道見本市「イノトランス」が9月23日、閉幕した。会場で出会った鉄道エンジニアが思わずこぼした愚痴がその規模の凄さを物語っている。
まさに「世界最大の鉄道業界の展覧会」という枕詞がぴったりのこの催しには、60カ国から2955社が出展。来場者は14万5000人を突破したほか、20カ国以上から視察団が来訪と、主催者のベルリンメッセは「あらゆる統計から見ても、今回は過去最大の規模となった」と誇らしげに語っている。
偶数年に開かれる「イノトランス」という行事が世界の鉄道業界関係者からこれほどまでに注目を浴びるのはなぜだろうか。「メーカー各社が新製品や経営戦略を発表する場」、「最新鋭車両が見られる」など、最先端技術の実物をこの目で確認するのに最適な場所であることには間違いない。しかしそれよりも重要なのは、「鉄道業界のトレンドが今後、どの方向に向かっていくのか」を占う絶好の場である、と筆者は感じている。
車両を「爆チェック」する中国の技術者たち
会場内で目に付いたのは、欧州の主要メーカーが出展した最新鋭車両をつぶさに観察する中国からの技術者たちの活動。中国はこれまでに「あらゆる国の技術」を導入し高速鉄道網を整備、この9月にはついに2万キロメートルを超えている。
過去にさまざまな事情や経緯はあったものの、この数年以内の状況を見ると「国内での完全組み立て」を推進していることは紛れもない事実。一部の主要部品は輸入品に依存しているとはいえ、中国中車というメーカーが車両の生産車両数で、仏アルストム、独シーメンス、加ボンバルディア(鉄道部門の本拠地はドイツ)から成る欧州の「ビッグスリー」のそれを大きく抜き去っている。
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