財務省出身の黒田日銀総裁の考え方

市場動向を読む(為替)

黒田総裁は財務官経験者であるため、国際畑の財務官僚であったとの認識が市場でも一般的なようだ。だが、黒田総裁の財務省時代のキャリアを振り返ると、主税局での経歴が長いことに気づく。デフレ、円高を背景とする税収減を自ら体験してきた人物なのである。総裁就任前、日銀に対する批判は辛辣であった。2005年の著作「財政金融政策の成功と失敗」(日本評論社)の中では、日銀は繰り返し、政策判断を誤ってきたと述懐している。

その理論的根拠の一つとなっているのが、マンデル・フレミングモデルである。マンデル・フレミングモデルは、変動相場制の下での財政政策は、金利上昇に伴う通貨高を招き、貿易収支が悪化するため、景気刺激策としての効果が薄いとする。一方、金融政策は、金利低下に伴って通貨安が進み、貿易収支も改善するため、景気刺激策としてはるかに効果的とする。

黒田総裁は、財政政策は所得再配分機能などに徹し、金融政策が景気調整機能を担うべきだと主張する。そうすれば、財政赤字が累積的に拡大することもないはずである。だが、実際の日本では、過去、常に日銀が、ためらいがちにしか金融緩和を行わず、景気の回復が遅れた。金融政策に代わって財政政策が景気刺激のために拡張的とならざるをえず、円高も進行した。悪循環に陥る中で、歳出増加と税収低迷で財政事情も累積的に悪化してきた――。

敢えて大胆に言いかえるならば、財務省が管轄する財政事情が苦しいのは日銀が元凶であると黒田総裁は語ってきたように聞こえる。日銀の体質を変える。そのような思いを持って、黒田総裁は今月4日の異次元緩和を決定したのではなかろうか。

2%インフレ目標難しく、追加緩和も

日本の失業率とインフレ率の関係を示したフィリップスカーブを見ると、失業率が3%を上回っている間はインフレ率が2%以下で推移する傾向が確認される。現在、日本の失業率は4.3%前後で推移中で、1995年以降では一度も3%を下回ったことはない。日本の硬直的な労働慣行を踏まえると、失業率が3%を下回って低下するには、相当期間にわたって潜在成長率を上回る経済成長を続ける必要がある。

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