ニヤつかずにはいられない、山口晃アート

エルメスさえも魅せられた、独特の世界観

ベルトコンベヤーの“流れ作業”で、仏像を量産

時間軸を広げてものを見る視点には、清々しさもある。「1000年後には、今の主義主張の違いとか、世代間格差論なんてどこかにいってしまう。ずっと遠い一地点を想定すると、少しだけ現実に対して肩の力が抜けるんです」。

『千躰佛造立乃圖(せんたいぶつぞうりゅうのず)』 2009年 個人蔵 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery
絵の右から左へ、牛が回すベルトコンベヤーに乗って、仏像が次々に完成していく

もう1点、出品作を紹介すると、『千躰佛造立乃圖(せんたいぶつぞうりゅうのず)』には千手観音の制作工程が描かれている。

「平等院の阿弥陀様を作った、院派という仏像作りの一派がいるんです。彼らが画期的だったのは、大きな木を切り倒さなくても、木を組み合わせて、流れ作業であっと言う間に仏像を仕上げてしまうこと。現代ならベルトコンベヤーだと思って、牛がゴットンゴットンと回すことにしました」。

山口さんは昨秋、『ヘンな日本美術史』(祥伝社)を出版した。やさしい文章で絵の面白さを語り、すでに7刷と版を重ねている。絵の楽しみ方を聞いてみると、

山口晃さん
(撮影:松蔭浩之)

「楽しまなくていいんです。楽しまなきゃとか、美術だから何か意味があるんだろうとか、そういうものを外すと楽になる。“わからない”を持って帰るんです。最初にビビッとくればいいんですけど、こない場合は、いくつも足を運んでいるうちに何か見えてくる。名の売れた画家でも駄作はあります。野球の打率と同じで、5割いけばたいしたもの」。

絵はやはり、じっくり見るものなのだろうか。

「きやつは動かないものですから、静かに耳をすましてあげないと、なかなか言葉が出てこないんですね。テレビはパッパと変わるけど、絵の時間はもうちょっとだけ長いんです」

会場には自称“一人国際展”の「山愚痴屋澱エンナーレ2013」のコーナーや、ドナルド・キーン著『私と20世紀のクロニクル』の挿絵、五木寛之の新聞小説「親鸞」の挿絵の展示もあり盛りだくさん。山口晃さんのもてなしを受けた気分になる展覧会だ。


「山口晃展 付り澱エンナーレ ~老若男女ご覧あれ~」

4月20日(土)~5月19日(日)
そごう美術館(そごう横浜店6階)
10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
会期中無休
大人1000円 

新潟市美術館に巡回(7月13日~9月30日)
 

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