「飲む日焼け止め」は効くのか、効かないのか 科学的に効果は証明されていない

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ヒューストンの病院で働くステファニー・ココリス(29)は、毎朝飲むビタミンのサプリメントにヘリオケアを加えた。「錠剤だから飲むのも簡単だし、副作用もなく安全だ。飲まない手はない」と彼女は言う。

勤務先で皮膚がんを初めとする紫外線によるトラブルを抱えてやってくる患者を日々見ていたココリスは「早め早めの保護に勝るものはない」と思ったという。患者たちにもヘリオケアを勧めているという。

手軽さから人々が魅力を感じるのは無理もないが…

エール大学医学大学院の皮膚外科医長、デービッド・レフェルは、こうした製品に人々が魅力を感じるのは無理もないと考える。「『出かける前に1錠、もしくはさわやかベリー味のドリンクを』と言われれば、人は『日焼けの特効薬だ』という印象をもってしまう」と彼は言う。「そして『これを飲んだら自分の身は守られる。だから何だってやりたいことができる』と思うわけだ」

だが「UVOに日焼け止め効果があることを示す科学的な証拠などまったくない」とレフェルは言う。日焼け止め効果をうたう他の飲むタイプの製品もそうだ。「カモになる人がどんどん増えている」

UVOやヘリオケアを初めとするこうした製品のほとんどは医薬品ではなくサプリメントとされているため、米食品医薬品局(FDA)の認可を受けるための厳しい試験は必要ない。

「こうした新しいタイプの日焼け止め製品の効果を評価するための情報はろくに手に入らない」と、皮膚がん財団のデボラ・サーノフ上級副社長は電子メールで述べた。

ニューヨーク大学医学大学院のダレル・リーゴル教授(皮膚科)は、多くの会社が新しいタイプの日焼け止めの開発に取り組んでいるのは不思議ではないと言う。「一般的に、人は日焼け止めを使いたがらないものだ。ぬるぬる、べたべたしているし、体中に塗らなければならない」

米皮膚科学会が昨年、発表した研究によれば、いつも日焼け止めを塗っていると答えた割合は男性の14.3%、女性の約30%に留まったという。

リーゴルは新しいタイプの日焼け止め製品の多くは「ろくでもない代物」だと言う。自分の患者には、製造元が副作用がないと言っている「飲む日焼け止め」になど手を出さないよう呼びかけているそうだ。副作用がないということは普通、効果がないことを意味すると彼は言う。

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