東電「使用量通知遅れ」は自由化の阻害要因だ 口座引き落としできず、料金の過大請求も発生
これは、「スタンダードX」や「プレミアムプラン」など、東電EPが自由化に際して新たに投入した料金プランにまつわるものだ。これらの新料金プランは「スマート契約」(実量制)と呼ばれるもので、従来のアンペア制に基づくブレーカー契約とは異なり、月々の電気の使用実績に基づいて基本料金が毎月変動する仕組みになっている。
スマート契約での基本料金は、新たに設置したスマートメーターで計測した過去1年間を対象にした各月のピーク電力(30分ごとの使用電力量を元に算出した需要電力の月間最大値)に基づいて決まる。そのため、一つでも月間のデータが欠けていると基本料金が決まらない。
そのうえ、東電EPが新たに構築したシステムでは、古い月の分から順番に電気料金を請求する仕組みになっているため、4月や5月分などで問題が解決できていないと、それ以降の月についても電気料金の請求ができない。そのため、未請求が解消しにくい。
こうしたこともあり、東電EPでは9月9日時点で約3万5000軒の顧客について、請求の遅れが生じているという。
それにしても、なぜ東電PGでこれほど深刻な問題が起きたのか。中部電力や関西電力などほかの電力会社では、通知遅延や誤請求は問題になっていない。
東電PGで問題が多発する理由として考えられるのが、(1)システム構築上の問題、(2)スマートメーター設置に際しての問題、(3)問題解決に必要な人員の不足、などだ。
(1)のシステム面では、電力小売全面自由化に際して東電PGでは、三菱電機に発注して「託送業務システム」を新たに開発した。同システムは「社外公開」「託送契約・料金」「検針値管理」「地点・計量器管理」など数多くのサブシステムに分かれており、それぞれに多数のデータベースサーバーが置かれている。これらのシステム間でデータ連携がうまくいっていないことにより、問題が起きている。
計器取り替え情報の連携が取れていない
たとえば、トラブル発生のパターンとして次のようなものがある。顧客が契約する電力会社を切り替える場合、「スイッチング」の申し込みが行われる。それを踏まえて旧型のメーターからスマートメーターへの取り替え工事が実施されたうえで、契約開始日以降は顧客は新たな企業に電気料金を支払う。しかし、工事業者の失念などによってメーターの取り替え情報が契約開始日以前に東電PG社に伝えられていない場合に、問題が発生する。
「計器取り替え情報の連携」が契約開始日よりも後になることに伴い、誤った検針期間に基づく使用量が託送契約・料金データベースに記録されてしまうからだという。こうしたことが誤通知にもつながっている。これは、現場での取り替え工事に際しての工事業者への指導の不徹底も一因だ。
また、各サブシステム間での計器取り替え情報の同期がうまく取れず、検針で得た電気の使用量の情報が、どこかのサーバーに埋もれて見つからないという問題も起きている。これが通知の遅延につながっている。
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