東電「使用量通知遅れ」は自由化の阻害要因だ 口座引き落としできず、料金の過大請求も発生

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数カ月たっても使用量データの所在が判明しない場合には、小売販売会社と顧客との間で、たとえば前年同月と同じ量を使ったとみなす「協定」を結ばざるをえなくなる。東電PGによれば、4~6月分の使用量について、協定のための協議の対象となったのが9月7日発表時点で約5700件。そのうち3800件以上が未解決のままになっている。

こうしたトラブルは各社の電力ビジネスにも悪影響を及ぼしている。

東電PGが作成したおわび文書や報告書

新規参入した小売電気事業者によれば、「当社が代理店契約を結ぼうとしていた相手先企業から、事態が落ち着くまで契約を見合わせたいという話があった」という。

また、東電PGによる顧客対応窓口の設置が遅れたこともあり、「東電PG側に原因があると説明しても信じてもらえなかった。それどころか『お宅の会社に問題があるんじゃないか』とのクレームも顧客から寄せられた」(同社幹部)という。

「解決を願うしかない」

JXエネルギーの田中部長は、「コールセンターの人員増強や担当部署を含めた残業時間の増大など、大変な負担になっている」と打ち明ける。

こうした人員増強などにかかった費用について、新電力大手の東京ガスでは「東電PGに求償することを含めて幅広く協議している」(広報部)と説明している。

十数年前、大手銀行のみずほグループでは、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の旧3行のシステム統合に際して、「口座引き落としができない」「ATMからおカネを引き出せない」といったトラブルが数百万件レベルで発生し、大きな社会問題となった。今回の東電PGのトラブルは規模こそ異なるとはいえ、その時のありさまを想起させる。東電PGの場合は、発覚から4カ月近くが過ぎても抜本的な問題解決の見通しが立たないだけに深刻だ。

監督官庁の経済産業省は6月17日付けで電気事業法に基づく業務改善勧告を行い、改善計画の提出や定期的な報告を求めている。だが、東電PGを監督する同省・電力・ガス取引監視等委員会事務局の恒藤晃・ネットワーク事業監視課長は、「今後どのように安定させていくのか、東電PGの説明を聞いても今一つわからない」と話す。

「営業の自粛はしていないが、トラブル処理に手を取られている」(JXエネルギーの田中部長)、「とにかく一日も早い解決を願うしかない」(東急パワーサプライの佐藤グループ長)との各社の声は切実だ。  

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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