ディズニーランド・パリの感想を総括
最後にディズニーランドパリスの感想を総括したい。総じてたいへん楽しかったのだが、赤字から脱出する改善の余地は大きく、これは日本社会の問題点とも幾分共通している。
まずスタッフにキャラクターを演じることへの情熱が足らず、フランスの公務員的な印象を受けた。調べてみるとあながち間違ってもおらず、金融危機以降のリストラでスタッフが激減し、従業員に過度の負担がかかっているという。これは投資銀行のM&A部門にいる友人も「バンカーや秘書が解雇されて、同じ仕事量を半分の人員で行っているので、疲労してやる気がしない」と言っていたのに、相通ずるものがある。
そういえば英誌INDEPENDENCEの2年前の記事に、ディズニーランドパリスの社員2人が“ミッキーマウスにこれ以上奉仕したくない”と書き残して自殺したのが特集されていた。テーマパークビジネスでは、スタッフの質と訓練と彼等・彼女たち自身の満足度が不可欠なだけに、スタッフの採用と教育と十分な報酬は喫緊の課題である(ただしディズニーランドは、おカネをもらわなくても働きたい、くらいの熱狂的なファンが応募してくるのでディズニー側の交渉力が強く、労働条件が過酷になるのは想像に難くない。ファッションモデルなどの仕事と一緒で、夢の仕事は総じて過酷なのである)。
また入場料金も高いが、絶叫している写真だけで20ユーロチャージしたり、お土産ショップがあまりに多すぎたり、と、夢の国の割に現実的な商売の香りがプンプンしてしまったのは残念だ。いちいち払うのが腹立たしいので、何なら入場時に20ユーロ上乗せして、あとはすべてフリーみたいなサービスの登場を待ちたい。
また、驚いたことに繁忙期にもかかわらず、フランスのディズニーランドは規制で非正規社員を雇えないので、ディズニー側も人員採用に慎重で結果的に必要な雇用の創出が阻害され、ディズニーの成長自体が阻害されているという。
これは何かと非正規労働や人員削減への反対が取りざたされる日本経済と共通する問題点が見え隠れする。結果的に正規社員のミッキーやグーフィーだけが繁忙期も閑散期も同じく働き、たとえば一時的に超多忙になるクリスマスの時に非正規社員としてベルやポカホンタスの応援を頼めず、非正規社員ならではの仕事の機会が失われているのではないか。
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