中国の苦悩:朝鮮半島の安定と北東アジアの非核化
上記で述べてきたように、中国は北朝鮮情勢の安定を望んでおり、過度に刺激しないことが国益にかなうと信じている。しかし反面、核保有している北朝鮮が、いつか中国に敵対的にならないともかぎらず、また韓国や日本の核保有を誘発し、北東アジアに核が拡散するのが中国の戦略的利益を損なうというジレンマにも直面している。
他方、米国の出方も測りかねている。彼等も戦争を望まないとする反面、北朝鮮が核放棄の代償として求めている体制の安全保障と平和条約の締結に関しては明確な回答をせず、直接対話には応じていない(別に体制保障に応じたほうがいい、と私が言っているのではなく、中国での討論の内容を紹介しているだけなので御了承願いたい)。
体制の保証を米国から拒まれている中、核を持たず、悲惨な末路を迎えたリビアやイラクの前政権を見ている金ファミリーの立場からいえば、おいそれと核を放棄するわけもないだろう。この膠着状態はひたすら続いており、この間も秘密裏にホワイトハウスからの特使がこの間何度も北朝鮮に派遣されてきたが、交渉は失敗に終わっている。
日本の対応:政府の無策の言い訳に使われる“拉致問題”
こんなとき、すっかり朝鮮半島情勢をめぐる国際会議の場で存在感が薄くなってしまっている日本政府の対応といえば、北朝鮮の核問題や、(日本国内では意図的に避けられる話題だが、国際的に見れば極めて大きい)植民地支配の清算、そして平和条約の締結という大局的な政策に関し、拉致問題にすべて引っ張られ(ないし拉致問題を利用して)、何の進展もなかった。
拉致問題は被害者の方々およびご家族の方々の高齢化が進むこともあり、一刻も早い解決が必要だが、完全に政局と感情的な支持集めに利用され、上記すべての政策に関し自民党が無策であったことの言い訳に使われている感すらある。どれだけ理由をこねくり回そうと、10年も経って何も進展していないのが現実だ。中国での報道にもあったが、北朝鮮問題の問題は北朝鮮だけにあるかのような報道がまかり通っているが、周辺諸国の対応にも問題がある、という点は一理ある。
ミサイル発射が目前に迫る緊迫状況が続く中、親愛なる読者の皆様は将来の北東アジア情勢のビジョンをどのように想い描かれているだろうか。そして10年後、20年後に北朝鮮情勢はどのように変化しているのだろうか。今回のコラムを書くにあたって大いに参考にした中国の討論番組“一虎一席談”の中に、興味深い例えがあったので最後に紹介したい。
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