「ドクターX」、テレ朝・大人気ドラマの裏側 視聴率2冠の牽引役、内山聖子プロデューサーに聞く

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――この“ダーティーヒロイン”への挑戦によって、米倉涼子さんは20~30代女性ファンに加えて、50代以降の男性からも支持され、新しい面を開拓しています。

フジテレビや日本テレビのドラマの強さが20~30代女性視聴者の獲得にあるとすると、テレビ朝日は、お家芸とも呼べる刑事ドラマやサスペンスのドラマ制作力を生かして、50代以上の男女の視聴者をしっかりつかんでいるという強みがあります。この層のお客様(視聴者)は大切にしたいですね。そのため、「大人の目線に堪えられるものになっているかどうか」はつねに意識しています。

またドラマには、今という時代の実感を盛り込んでいます。「ドクターX」のときは、閉塞感が漂う中で、コンプライアンスやルールにグウッと縛られている世の中に風穴を開けたいという思いが強かったんです。会社だけでなく、病院という組織もまた縦社会で、会社員と同じく医師も上司には逆らえず、ドラマの中のせりふで言うと「御意」と言い続けなければならない。

逆らっていいはずなのに逆らわない「サラリーマン気質」が蔓延している世界で、人の命と向き合うには「職人気質」が必要なのではないか、ということを表現しました。「大人のマンガ」として楽しんでもらいたかったので、大げさなくらいの演出やせりふで、私自身が見たいと思っていた「自由なヒロイン」として、主人公の大門未知子を米倉さんに演じてもらいました。

「黒革の手帖」は10年ほど前のOLさんの立ち位置から、ヒロイン像を組み立てています。ヒロインは銀行員で、脚本の中には「銀行では巨額なおカネが目の前を通り過ぎていくのに、私の貯金は10年働き続けても400万円程度。銀行にとって、預金400万程度の顧客はゴミと言われる」というような言葉が出てきます。

現実的にOLさんは、長く働いても出世の道が用意されているわけではなく、努力しても報われる瞬間は少ない。30歳になると肩をたたかれ退社をうながされる……という中で、悪いことをしても嫌われても、自分の力でのし上がっていくエネルギーや反骨精神をヒロインに植え付けました。

どことなくみんなが浮き足だってふわふわとしているように感じられる現在、私が見たいなと思うドラマは、心に刺さるヒューマンドラマでしょうか。

次にどんなものをやるかはまだ構想段階ですが、今年中にまた、米倉さんとタッグを組んだドラマを作ろうという話が進んでいます。

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