勉強しても日本人が英語をできない根本原因

日本にも「人前で話す」ための教育が必要だ

文部科学省の中央教育審議会が公表している2020年度からの入試制度改革では、「面接」「集団討論」「プレゼンテーション」などを入試に活用する方針が打ち出されている。入試だけではなく、就職試験、セールス、社内外のプレゼンなどなど、1対多のパブリックスピーキング力がますます必要とされるようになっている。

ところが、これを学校教育において教わる機会は日本では非常に少ない。そもそも、国語教育において、「読み」「書き」の比重が圧倒的に高く、「話す」教育のプログラムがなく、教える教師もいない。

「話す」「聞く」教育がないがしろに

古いデータになるが1957年のアメリカの調査では、人は1日のうち、起きている時間の70~80%を何らかのコミュニケーションに使っており、そのうち、9%が「書く」、16%が「読む」、30%が「話す」、45%が「聞く」ことであった。SNSやメール、チャットなどの登場により、この数字も変化している可能性もあるが、チャットも書く「話し言葉」の変化形と考えれば、「話すこと」の比重はそれほど下がってはいないだろう。コミュニケーションの75%を占める「話す」「聞く」教育がないがしろにされてしまっているのだ。

先日、ある大学の仕事で、キャンパスを訪れた時、窓越しに大教室の授業が見えた。20列ほどある席で、生徒はほぼ全員が後列10列に座り、前方の席はがら空き。教師は一方的に話し、黒板に書き込んでいるだけだった。一方、アメリカやイギリスの授業はそうはいかない。少人数制で、ひたすら発言を求められるので、英語は聞き取ることも話すことも不自由だった筆者はとにかく冷や汗の連続だった。

一昨年から昨年にかけたニューヨークで通ったアクティングスクールやパブリックスピーキングのワークショップでも、教師が一方的に講釈を垂れることはまずなかった。教師は、常に問いかけ、生徒の答えを引き出す。教師から「正解」を与えられることはほぼなく、自分たちなりの「答え」を導き出すための対話がひたすら続くという感じだ。どの授業も、徹底的にインタラクティブ(双方向)であり、「正解のない問いに答えを見いだす」ための禅問答のようなプロセスだ。

一方で、日本の教育はとにかく「暗記」させる。多くの科目で、先生が与える「正解」を生徒がひたすら記憶するだけの授業が多い。息子が以前、通っていた日本の学校のテストで、異なる種類の「彫刻刀」の名前を答えさせる「技術」のテストを持ち帰ってきたが、いったい何のためにこれを覚えなければいけないのか、首をひねらざるをえなかった。

アメリカでは歴史の授業でさえ、年号を覚えさせて試すテストなどない。その代り、徹底的に自分で調べ、自分なりの答えを探し出すことが求められる。「ガンジーは何の変革のために立ち上がったのか。なぜ、どのように行ったのかを調べ、その結果をまとめて、コンピュータを使ってインフォグラフィックス(情報やデータを図や画像などで視覚的に表現した資料)を作りなさい」。小学生のレベルでこんな課題が日々出され、論理構成力が鍛えられていく。

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