大塚家具、ニトリ真向いガチンコ出店の狙い 千葉・船橋でイケアも加わり「家具戦争」勃発

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だが、業績には結びついていない。大塚家具の2016年12月期の業績予想は、39億円の大幅営業赤字に転落する見通しだ。2月に公表した期初計画は黒字だったものの、6月と8月に相次いで下方修正した。営業赤字の主因は売上高の急減であり、今期は前期比16.7%減の483億円と、急減する見通しで、家具販売が不振だ。前期の場合、バラエティ番組への社長自身の露出や値引きセールを大々的にやっており、その反動減も大きい。

また接客方法の変更による店舗オペレーションもついてきていない。あるベテラン社員は「従来のやり方に慣れていることもあり、今のやり方ではお客様の情報がなくて困っている」と明かす。幹部社員の一部は、勝久氏が設立した競合の新会社「匠大塚」に転じており、モチベーションの低下もあるとみられる。

一方、ニトリは絶好調だ。既存店が成長を続け、新店も次々に積極出店している。2015年に出店した銀座店は、ワンフロアから2フロアに増床する計画など、手薄だった都心の店舗でも、確実に新規客を開拓できている。似鳥昭雄会長は業績好調な理由について、「テレビCMなどの効果もあり、今まで来ていないお客さんに来てもらえている。主婦にいったん来てもらえると、ニトリって意外といいじゃないとなる。このチャンスをひきつけて、ほかの商品も買ってもらうように継続させていきたい」と誇る。

ニトリはSPA(製造小売業)モデルで、企画、製造から流通、販売まですべて自社で完結。家具ばかりでなく、雑貨などホームファッションにも強く、手ごろな価格と豊富な商品が支持されている。

ニトリやイケアと競合する可能性も

同じ船橋のエリアにあるスウェーデンのイケアは、10年前に日本上陸1号店として開業した

もっとも、大塚家具はこれまでニトリやイケアと一線を画し、中高級品を主体にクローズ店舗で売ることで、差別化してきた。とはいえ、新たに進める多店舗化やオープン店舗政策などのビジネスモデルは、少なからず競争の激しい“レッドオーシャン”に飛び込むことにもなる。価格帯は確かに違うが、ニトリも今は上質ラインで勝負をかけてきており、その差はジワリと縮まりつつある。

大塚久美子社長は就任以来、株主還元重視を掲げ、配当を2015年度~2017年度の3年間は、倍増の年80円とする政策を実施。その間にビジネスモデルを転換し、成長軌道に乗せる算段で、ある程度の業績低迷は承知のうえだった。が、業績悪化は、想像をはるかに超える。

中期経営計画に掲げる、2017年度の営業利益19億円は、もはや画餅だ。手厚い株主還元に売上高急減が重なり、現預金はこの半年間で109億円から41億円(今年6月末時点)へ急落している。家具激戦区での新店は、起死回生となるか。大塚久美子社長の試練はまだ終わっていない。

(撮影:尾形文繁)

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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