超金融緩和「2・2・2」、黒田日銀の乾坤一擲 異次元の金融政策で問われる効果と副作用のバランス

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目玉はMBの規模拡大にある。2012年末のMBは138兆円だが、これを14年末には270兆円まで拡大する。「積極的な金融緩和を実施している」(白川前総裁)としてきたものを、わずか2年でその規模を2倍にするのだ。「逐次投入はしない」(黒田総裁)というのは、白川前総裁時代の金融緩和策だった資産買い入等基金(新たな枠組みでは廃止)で10兆、20兆円の金融緩和を何度も繰り返していたことを指しているのだろう。 

資金供給量拡大の中心となる長期国債は、12年末の保有残高が89兆円のものを14年末には190兆円まで拡大し、短期から中長期の金利の低下を推し進める。これまで、日銀の国債購入が国の借金を手助けする財政ファイナンスとみなされないよう、長期国債の購入を銀行券発行残高以下にするという「銀行券ルール」を自主ルールとして設けていた。

だが、今回の大幅な国債買い増しを受けて、同ルールは「一時停止する」と封印した。長期国債のみならず、資産市場への働きかけもさらに強め、ETFやJ-REITの買い入れも拡大する。

 前代未聞の金融政策のリスクには楽観的?

 「長期国債の買い入れやMBの供給が、市場参加者の常識を超えるきわめて巨額のものであることは十分認識している」(黒田総裁)というように、乾坤一擲の政策であることは間違いない。前例のない超金融緩和による金利の反転上昇や資産市場のバブル化といった潜在的なリスクについて、黒田総裁は、「現時点で、重大な副作用がただちに現れる可能性はきわめて薄い」と述べた。

果敢な金融緩和でデフレが続くという予想を打破し、物価が上昇するという期待を高めることを黒田総裁は重視する。実際、今回の政策決定前から大胆な金融緩和を見越し、為替は円安方向へ動き、輸出企業の採算改善期待も高まって株式相場は上昇してきた。株価が上がれば、企業の資金調達コストが低下し、株高による資産効果で個人の消費増加にもつながるとういうのが、黒田日銀が見込む金融緩和の波及経路のひとつでもある。

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