私の著書最新刊『「日本バブル」の正体~なぜ世界のマネーは日本に向かうのか』(4月4日刊行)でも詳しく書き、かつその新刊記念講演会(リンクはこちら)でもじっくりお話しすることなのであるが、「シェール革命」と聞くとどうしても納得がいかないことがいくつかあるのだ。思いつくままに書くならば次のとおりとなる。
◎鳴り物入りで始まった「シェール革命」だが、特にシェールガスはパイプラインがなければアメリカは輸出することができない。その肝心のパイプラインがまったく整っていないのが現状である以上、シェールガスがアメリカから世界、とりわけわが国に向かって噴き出してくるのは“今”ではなく、“将来”である。今から大騒ぎすべき話ではない。
◎つまり「シェール革命」が最盛期を迎えるまでにはまだ時間があるのだが、その間、ほかの国々が指をくわえて待っているとは考えづらい。ナイジェリアなどほかの産出国は温暖化効果ガスこそ大量に出るものの、従来型の天然ガスや原油のダンピング(廉売)を一斉に始めるはずだ。そうなった場合、採掘に費用がかかるため高めの価格設定しかできないシェールガス/シェールオイルにまで触手が伸ばされるのかは甚だ疑問である。
◎ さらには「シェール革命」と言いつつ、アメリカ自身が次世代移動体として電気自動車や水素燃料電池車の開発を加速させているのが大いに気になる。実際、オバマ政権はこの方向に具体的な形で歩み出しており、3月15日にイリノイ州で行った演説で同大統領はこれら「ガソリンを使わない自動車」の実用化のため、今後10年間で20億ドルほどを拠出すると表明したばかりなのである。「シェール革命一本であくまでも行く」という気合いは微塵も感じられないのだ。
「高貴な嘘(noble lie)」という言葉がある。「リーダーたるもの、全体利益の実現のためには時にウソをつかなくてはならないこともある」といった意味合いだ。アメリカはこれまで何度となく「高貴な嘘」でわが国、そして国際社会を翻弄してきた。2003年に行われたイラクに対する武力行使の際、「イラクで大量破壊兵器を見つけた」と国連安保理の場で生真面目な軍人・パウエル国務長官(当時)を使って一大プレゼンテーションを行わせたのがその典型例だろう(その内容はその後、同国務長官自身が吐露したように「真っ赤なウソ」であったことが明らかとなる)。
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