富裕層は「日本脱出」をあきらめる 成毛眞インスパイアファウンダーに聞く

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税務当局は富裕層の資産をどこまでも捕捉

──課税強化で富裕層が日本から逃げようとする動きがあります。

税金を払う人の年齢の問題が大きい。高度成長の名残がある1990年代は、ベンチャー企業の経営者などはみんな若く、所得の半分を課税されても関係なかった。海外に行って節税するより、国内で自分の資産を倍にするほうが簡単だったからだ。しかし、その金持ちが70、80歳代になり、資産を倍にするのが難しくなってきた。さらに相続税があることを考えれば脱出しようかという気になる。

成毛眞(なるけ・まこと)
インスパイア取締役ファウンダー
1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒業後、自動車部品メーカーやアスキーを経て、86年、マイクロソ フト日本法人に入社。91年、同社社長に就任。2000年に退任後、投資コンサルタント会社インスパイアを設立。著書に『本は10冊同時に読め!』、『大人げない大人になれ!』など。

環境もある。デフレ下ならカネの価値がどんどん上がるから、金持ちは日本にとどまる。何もしなくても10年で倍になるから10年後に資産の半分を相続税で払っても、結局一緒になる。

しかし、これがインフレに転化する局面になれば、どんどんカネの価値が落ちるから海外へ行こうとする動きが出てくる。

でも国税庁は国籍転換しないかぎり、所得を捕捉すると言っている。さすがに国籍まで捨てるほどの金持ちは日本にはいない。移住なら私でもするかもしれないが、国籍となるとさすがに厳しい。外国で国籍を取るのは、カネさえあれば簡単だけど、日本は元に戻すのが難しい。

国税庁が捕まえると言っているから、誰も海外に行かないだろう。富裕層の人々はみんなあきらめて国内で使ってやろうという気持ちになっている。経済政策という意味ではちょうどいいかもしれない。

──成毛さんが海外に出ていく可能性はありますか?

ない。趣味の歌舞伎が見られなくなる(笑)。が、経済政策が失敗し、ハイパーインフレが起こるようならすぐに逃げる。当然、金持ちも逃げ始める。現金化するために家や不動産の投げ売りが始まるので土地の値段も下がる。土地が下がるのが最初のシグナルだと思う。

(撮影:梅谷秀司)

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