薄毛治療の新薬「ザガーロ」の気になる効き目 内服男性の約半数は従来品と変わらない結果

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しかし、これはもともと「薄毛治療薬」として発売されたわけではなく、前立腺肥大の治療薬として開発されたもの。それが治療の過程で、薄毛や抜け毛の改善に効果があることが判明し、1997年にFDA(米国食品医薬品局)がAGA治療薬として認可。日本でも厚労省が承認したのだ。このように、ある特定の疾患に有効な治療薬から、別の疾患に有効な新たな薬効を見出すことをドラッグ・リポジショニングといい、特に米国では市民権を得ている手法だ。

そして今年の6月、このドラッグ・リポジショニングを用いた、新たなAGA治療薬が日本市場にデビューした。それが英国の大手製薬企業、グラクソスミスクライン社(以下GSK)が発売した「ザガーロカプセル」だ。このカプセルの主成分はデュタステリドという成分で、日本国内ではアボルブとして前立腺肥大に適応がある薬。すでに世界85カ国で処方されており、安全性も認められていることから、AGA治療薬として承認された。

このザガーロカプセルの特長は、AGAを誘発する男性ホルモンDHTの産生を促す酵素Ⅰ型、Ⅱ型の双方に作用することにある。プロペシアはⅡ型のみに作用することから、これまで以上の発毛効果が期待され、販売元であるGSKは約1.5~1.6倍の発毛効果があると公表している。

ここまでの情報はすでに多くの男性誌などで伝えられてきたが、知りたいのは実際に内服した結果である。そこで、発毛治療クリニックの最大手である、メンズヘルスクリニック東京に実際の効果を聞いてみた。こちらのクリニックでは、60人程度のクライアントの協力を経て、半年以上前からデュタステリド(ザガーロカプセル)の処方を行い、その経緯を観察した。

従来品が期待外れだった時の備え

その結果、デュタステリドを内服した全員の発毛状況が改善にはならず、「約半数の30人は従来の効果(プロペシアとミノキシジル)と変わらず、10人が多少改善、10人が多少悪化、そして、3~4人は脱毛が進んでしまった」(メンズヘルスクリニック東京 AGA専門外来 福田康孝医師)ということに。

この治療結果を受けて、メンズヘルスクリニック東京では従来のプロペシアやミノキシジルで効果が持続していれば、ザガーロカプセルへの変更は薦めず、プロペシアでは発毛効果が強い場合や、新薬を試したいという強い希望があるクライアントのみに処方を行うことにしているという。

確かに薬効には人種差や個人差があるため、すべての人に同じ結果が期待できるとは限らず、ザガーロカプセルも同様だ。ただ、「なかには改善した人もいる」(福田医師)ということから、プロペシアの効果が期待できなかった時の“備え”として、また、選択肢のひとつとして覚えておくことをおすすめしたい。

ちなみに、発毛治療薬には、こういった内服薬のほかに「頭皮注射」という、頭皮に直接薬剤を打つ治療法を施しているクリニックもある。次に薄毛の問題を取り上げる際は、この頭皮注射に触れようと思う。

加藤 智一 美容ジャーナリスト

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1973年東京都生まれ。複数女性誌の編集部で美容・ファッションを担当し、アシェット婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社。女性誌の美容担当を経て2005年に独立。女性誌・男性誌・Webなどさまざまな媒体で編集・執筆を行うほか、講演はPRアドバイスも。最新のスキンケア情報、メイクアップのトレンドから美容医療まで幅広くカバー。著書に『お洒落以前の身だしなみの常識』がある。

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