中国の金融自由化は、どこまで進んだのか 不良債権処理と金融システムの安定化が優先

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本格的に自由化を進めるには、第一に、足元の不良債権処理が重要である。この点では、最近、不良債権の資産証券化の再開などの動きが出ており、不良債権処理が加速するかどうかが注目される。不良債権処理が峠を越せば、金利自由化が実質的にも進められる。

第二に、銀行依存の金融体制を変えるには、長年指摘されてきた直接金融の拡充等を進めることに加え、インターネット金融の利用やインターネット会社等の金融への参入を秩序立って推進する必要がある。これにより、金利自由化だけでなく本稿で触れなかった業態自由化も進むことになる。

第三に、金利調整型の金融調節のための環境も整備しなければならない。国債市場のさらなる充実が必要である。国債金利のイールドカーブがしっかりしないと、金利体系が安定しない。

自由化の進展には市場との対話も重要

信用リスクを金利に反映させることも重要である。長らく債券市場でデフォルトが発生せず、特に国有企業の債務には暗黙の政府保証があるという前提で、信用リスク評価は重視されていなかった。だが、2015年以降債券市場でデフォルトが発生するようになり、最近では国有企業のデフォルトも生じたことから、信用リスクも重視されるようになってきた。これは債券市場の成熟の面からはプラスと捉えられる。

厚みのある金融市場や公開市場操作のツールも必要である。後者については、最近では、SLF(Standing Lending Facility、常設貸出ファシリティー)、MLF (Medium-term Lending Facility、中期貸出ファシリティー)等の人民銀行による市場への資金供給手段もそろってきた。これは資本流出入に機敏に対応する上でも重要である。

第四に、為替自由化については、人民元レートは制度上かなり変動することが可能である。当局は市場参加者の成熟度に対して慎重であると見られるが、その一方で、昨年8月の相場改革の際は、市場に改革の主旨をうまく伝えられず、混乱を招いた。当局側も市場参加者とのコミュニケーションを改善する必要がある。

今後は金融システム不安の解消に取り組み、それと平仄を合わせながら金利・為替自由化と金融インフラ整備を進め、さらに資本自由化を進めていくことを目指していると考えられる。

神宮 健 野村総合研究所(北京) 金融システム研究部部長

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じんぐう・たけし / Takeshi Jingu

1983年に野村総研入社以来、一貫してマクロ経済調査や資本市場調査に携わる。東京本社経済調査部での日本経済の調査の他、90年代にはNRIA(ニューヨーク)で米国経済を調査。2001年から2004年までNRI(香港)、2004年以降現在まで北京にて中国経済、金融資本市場・制度、金融業界の動向を調査している。

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