中国の金融自由化は、どこまで進んだのか 不良債権処理と金融システムの安定化が優先

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資本自由化について見ると、SDRの構成通貨入り(16年10月予定)を目指していたことなどから、2015年において、一部自由化あるいはほぼ自由化された資本項目は37項目で全体の92.5%に達している。

ここでも表面上自由化が進んでいるが、当局の姿勢を見ると、2012年には人民銀行調査統計司が10年間・3段階の資本自由化案のレポートを発表するなど資本自由化に積極的な動きが見られたが、その後は、むしろ自由化に慎重になっているように見える。

資本流出阻止へ海外送金チェックを強化

実際、様々な管理がなされている。特に、資本流出傾向が激しくなった昨年以降は、既存規定の厳格化の形を取りながら海外送金等に対するチェックが厳しくなった。また、最近の対外証券投資を見ると、06年の導入以来あまり人気のなかったQDII(適格国内機関投資家制度。割当てられた限度額の枠内で海外証券投資ができる)の投信が今年前半大きく売れた。

しかし、資本流出への警戒からと思われるが、当局が枠を絞っているためQDII商品を作り難くなっている。これは、ゆるやかな人民元高トレンドの下でホットマネー流入が続いていた頃、QFII(適格外国機関投資家制度)枠を絞っていたことと、流出入の方向が逆である以外、同じ構図である。

やはり、当局は大量の資本流出によって、不良債権問題をかかえる国内金融システムが不安定化することを懸念していると見られる。一方、技術的には、近年、金融市場や人民銀行の公開市場操作のツールは整ってきているが、大規模な内外資本移動に対応するにはなお不十分と当局が判断している可能性もある。

このように、金利・為替・資本自由化は進んでいるものの、実際はかなりコントロールされた中途半端な状況である。例えば、こうした中で米国が利上げし、中国から資本流出が生じた場合、これまでと同様、資本規制の強化とある程度の人民元安の組み合わせで対応することになろう。ただし、上述したように、さらなる投機的な動きが生じるリスクはある。

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