成長重視の白川総裁、期待重視の黒田新総裁 リーマンショック、大震災…「激動の白川時代」が終了
白川日銀の評価は、黒田日銀の実績次第
安倍内閣の発足ともに、1月に発足した経済財政諮問会議の場でも、白川総裁は「人々がデフレ脱却という言葉に託しているのは、賃金が上がり、企業収益も増加するなどして、人々の暮らし向きがよくなり、経済が全体としてバランスよく改善していくことだと考えられる」と発言している。
昨年4月、ニューヨークで行った講演でも、中央銀行が達成できることとして、「インフレの抑制」と「金融システムの崩壊を防ぐこと」の2つを挙げ、「デフレ脱却」をそれには含めなかった。デフレ脱却には、「成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が不可欠」というのが一貫した持論だった。
もっとも、アベノミクス「3本の矢」に「大胆な金融政策」とともに「民間投資を喚起する成長戦略」が含まれているように、白川総裁の言い分が孤立しているわけではない。ただ、新総裁の黒田東彦元アジア開発銀行総裁は、政府との連携を重視する姿勢を見せつつ、「(1月に日銀が決定した)物価目標2%の達成は日銀の責務。達成しなければならない」と、あくまで日銀自身の役割を強調する。これは、金融政策以外の一体的な取り組みを強調した白川総裁との大きな違いといえる。
白川総裁は在任中の金融政策について、「評価は第三者が行うもの」としたうえで「政策を評価するにはもう少し長い時間が必要」とも述べた。黒田新総裁は国会の場で、日銀が現在行っている金融政策について「明らかに不十分」「中央銀行ことして物価安定の責務を果たしてこられなかった」と厳しく批判し、さらなる金融緩和に意欲を見せている。また、2%の物価目標達成について、2年が「適切なメド」とも話した。
デフレ脱却に向けた日銀のイメージを刷新するため、黒田新総裁は白川総裁時代に決めた金融緩和を単純に拡大するのではなく、枠組み自体を変更して新たな施策を打ち出す可能性もある。「(日銀がデフレ脱却に向けた)強いコミットメントをマーケットに伝えることでデフレ期待(デフレが続くという予想)を打破し、物価が2%程度上昇していくという期待をつくることが金融緩和の効果をより強くする」と、黒田氏は日銀の姿勢で「期待」を変えることの重要性を説く。
市場や企業、家計の「期待」が変わると、実体経済と物価の情勢はどう変わりうるのか。白川時代にはなされなかったアプローチでデフレ脱却をめざす、黒田新総裁の政策とその結果が、白川総裁時代の評価を大きく左右することになりそうだ。
(撮影:尾形 文繁)
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