邦銀のサブプライム関連商品の保有・損失処理状況─邦銀は対岸の火事でいられるか─

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米国の信用力が低い個人向け住宅融資(サブプライム)問題が世界経済を揺るがし続けている。震源地である米国や欧州の金融機関、投資銀行に比較すれば、深手は追っていないとされる本邦の銀行であるが、果たして対岸の火事として看過できるのか。またサブプライム以降の異常な金融環境が不動産市況に与える影響を懸念する声も高まる。アンケートや個別調査、公表資料をもとに、金融ビジネス編集部が探った。


銀行名
A は、米国サブプライム住宅ローンに関連した商品への投資状況
B は、Aに関連した損失処理の状況
C は、モノラインに関連したエクスポージャー、損失の状況
みずほフィナンシャルグループ  A 米国サブプライム関連の証券化商品は第3四半期中に全額売却済み。2007年12月末の外貨建て証券化商品の残高(時価)は傘下銀行が1兆0900億円、評価損益は▲650億円、みずほ証券は4700億円、評価損益は▲2200億円。
 B みずほコーポレート銀行がスポンサー業務を行う海外ABCPプログラム向けの流動性供与枠に関し、裏付け資産であるCDO約1500億円の評価損相当額約700億円の全額に対し、偶発損失引当金を計上。傘下銀行における償却後のSIV関連投融資残高約130億円に対し、約120億円の引当金を計上(上期償却済分約▲110億円を含めた与信関係費用は約▲230億円)。海外LBO案件等の売却予定貸出金残高約9900億円に対し、約280億円の貸出金売却損失引当金を計上(引当率2.8%)。
 C みずほ証券における証券化商品を参照債権とする米国金融保証会社(モノライン)との間のクレジットデフォルトスワップ(CDS)の契約元本は、約2500億円。そのうち、米国サブプライム関連のエクスポージャーを裏付け資産に含むCDOを参照するものが約700億円、その他は主に事業法人向け債権を裏付け資産とするCDO等を参照するもの。なお、これらCDSのうち、非投資適格先をカウンターパーティとするもの(契約元本1600億円、上記米国サブプライム関連約700億円を含む)について、取引清算時の請求可能見積額(NPV)約490億円の全額に対して、引当金を計上。このほかに、投資適格先(1月25日現在の外部格付け AAA<安定的>)をカウンターパーティとするもの(契約元本約900億円、NPV約60億円)あり。みずほコーポレート銀行におけるモノライン保証付き証券化商品の保有残高は、自動車リース債権等を裏付けとするABSで約400億円(同行がスポンサー業務を行う海外ABCPプログラムの買収資産分)。
三菱UFJフィナンシャル・グループ  A 2007年12月末時点でのサブプライム関連(除くSIV)の投資残高は償還等により9月末比160億円減少の約2430億円、評価損は保有ABSの価格下落等により同▲220億円悪化の約▲300億円、12月末時点のサブプライム関連(除くSIV)投資の格付けは、トリプルA格が96%を占める(9月末時点 トリプルA格96%)。SIVへの投資残高は、格付け低下および市況悪化に伴う減損等により、9月末比500億円減少の約390億円、減損後の評価損は約▲10億円。
 B サブプライム関連商品およびSIV投資の損益(P/L)への影響額は、保有SIVの減損等を主因として約▲550億円の損失(サブプライム関連減損▲90億円およびSIV減損▲440億円+SIV売却損▲20億円)。
 C モノライン(金融保証会社)保証付きサブプライム関連商品の残高はほぼゼロ。CLO等でモノライン保証付き証券化商品を保有しているが、これらはほとんどが保証なしでもトリプルA格。モノラインへの与信およびクレジットデリバティブ取引はない。
三井住友フィナンシャルグループ  A (1)RMBS・ABSCDO等の証券化商品(減損後簿価約100億円)、(2)米国拠点で行っているウエアハウジングローン等のうち、サブプライムローン関連資産が担保となっている部分(償却後簿価約170億円、引当金額を控除した場合50億円)があり、引当金控除後のエクスポージャーとしては、合計で約150億円。
 B 証券化商品は期末時価の下落に伴い約750億円の償却を、また、ウエアハウジングローン等はDCF法等に基づき、サブプライムローン関連部分約250億円に対して、約200億円の償却・引き当てを行った。
 C モノライン保険会社を取引相手とするクレジットデリバティブ取引の時価評価額が約200億円(想定元本<参照債権残高>約9000億円)。このほかモノライン保険会社をグループの一部に持つ保険会社への融資枠が約250億円ある。モノラインの保証付き証券化商品の保有残高は約500億円。
青森銀行  A 投資残高は約3億円。銘柄は、サブプライムローンを一部含んだ証券化商品(2007年秋号掲載と同じ)。
 B 3銘柄約15億円を減損処理(BS上で1百万円評価減)。
荘内銀行  A (サブプライム)組み入れ比率0.25%のファンド・オブ・ファンズを1973百万円保有、参照プール企業の一部がサブプライム関連業種のシンセティックCDO(格付けはAマイナス、ダブルBプラス)を1000百万円保有。
岩手銀行  A CDOofABS(サブプライムローン組み入れ比率13.50%)に投資。金額20億円(取得価格)、68百万円(時価)、格付けはAAA(ムーディーズ)。
(出所)アンケート、公表資料、個別調査
(注)原則、2007年12月までの保有、損失処理。損失処理は原則、損益計算書に基づくもの。一部概数を含む
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