アメリカ次期大統領に組織管理能力はあるか−−ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

次期大統領の座を争っている民主党のヒラリー・クリントン、バラク・オバマ、そして共和党のジョン・マケインに共通するのはいずれも上院議員であるということだ。上院議員が大統領になるのは、何十年ぶりのことである。もっとも、これら候補者は指導力を発揮するすべを持っているにせよ、その行政手腕は定かではない。議員の下には100人を超えるスタッフと、何百人もの選挙スタッフがいる。だが彼らは何百万人もの職員を抱える行政府を管理できるのか。

現代の経営理論は指導力と管理能力を峻別し、指導力をより重視する傾向がある。マネジャーはプロセスを尊重し、安定性を求めるが、指導者はリスクに耐え、変化を作り出す。組織はマネジャーと指導者の両方を必要としているが、指導者のほうがより重要であり、専門家は、優れたマネジャーと無能な指導者を持つ組織はうまくいかないと指摘している。

だが、最近では、指導者の管理能力に対する関心が高まっている。きちんと運営されないビジョンは意味をなさないからだ。指導者は、意思決定を行うだけでなく、それを実行するために必要な情報を提供するシステムを作り上げるマネジメントスキルも持っていなければならない。

指導者は“裸の王様”になってはならない。優れた指導者は自分を支える顧問から情報が正確に自分に伝わるように管理することに成功している。皮肉にも、ジョージ・W・ブッシュ現大統領はMBA(経営学修士)を持つ最初の大統領であるにもかかわらず、父親のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領と比べると顧問を管理する能力に欠けている。

専門家たちは優れた管理システムとは舞台劇のト書きのようなものだという。役者は演出家にいちいち指示されなくても確実に舞台に登場し、舞台から去っていくからだ。しかしト書きだけでは十分ではない。人はいつも自分の都合のよいように管理システムを歪曲しようとする。そこで指導者は組織の一体性を維持するために重要な役割を果たす。もし指導者が、システムが十分かつ正確な情報を提供しているかどうかチェックしていなければ、システムは最も影響力のある部下によって歪められてしまうだろう。

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