それから10年。まさかそのブラックコーヒー氏が日銀総裁になり、デフレ退治の実践に当たられることになるとは……。ちょっと怖いけど、次期日銀総裁に「デフレ退治にみずほ銀行券というアイデアはどうでしょうか?」と聞いてみたい。
黒田新総裁に残されている手段は、あまりない
さて、白川総裁から黒田総裁へのレジームチェンジにより、日銀行内には「これからは白いものも黒だと言わなければならない」と恐れる声があるらしい。しかるに、デフレ脱却に向けて具体的に何をするのかと言うと、「みずほ銀行券」のような突拍子もないアイデアがあるわけではない。
残された政策手段はそれほど多くない。現時点では5年以上の長期国債の買い入れや、社債やETFなどの買い増しが噂されている。しかしそれだけでは「金融政策の大転換」と呼ぶには力不足だろう。外債の購入もG20でダメ出しをされてしまったし、市場にサプライズを与えることができる手段は、ごく限られているのではないか。
他方、物価上昇率2%の実現は、そんなに簡単なことではない。消費者物価を構成している財やサービスの中には、地方都市の家賃やIT製品や通信費など、とてもではないが値上げが考えられないものが含まれている。確かにマクロで考えれば「デフレは貨幣的現象」だけれども、ミクロで考えればデフレは中央銀行だけの所管ではないのである。
ところが、国会議院運営委員会における所信聴取の席で、黒田氏は「デフレ脱却に向けて、やれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたい」と述べている。また2%の物価上昇率の達成期限は、「個人的には2年くらいを念頭に置く」とも言った。とってもポジティブ、なのである。
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