「黒田日銀」の金融政策は白か、黒か、灰色か 吉崎 達彦が読む、ちょっと先のマーケット

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
拡大
縮小

それから10年。まさかそのブラックコーヒー氏が日銀総裁になり、デフレ退治の実践に当たられることになるとは……。ちょっと怖いけど、次期日銀総裁に「デフレ退治にみずほ銀行券というアイデアはどうでしょうか?」と聞いてみたい。

黒田新総裁に残されている手段は、あまりない

さて、白川総裁から黒田総裁へのレジームチェンジにより、日銀行内には「これからは白いものも黒だと言わなければならない」と恐れる声があるらしい。しかるに、デフレ脱却に向けて具体的に何をするのかと言うと、「みずほ銀行券」のような突拍子もないアイデアがあるわけではない。

残された政策手段はそれほど多くない。現時点では5年以上の長期国債の買い入れや、社債やETFなどの買い増しが噂されている。しかしそれだけでは「金融政策の大転換」と呼ぶには力不足だろう。外債の購入もG20でダメ出しをされてしまったし、市場にサプライズを与えることができる手段は、ごく限られているのではないか。

他方、物価上昇率2%の実現は、そんなに簡単なことではない。消費者物価を構成している財やサービスの中には、地方都市の家賃やIT製品や通信費など、とてもではないが値上げが考えられないものが含まれている。確かにマクロで考えれば「デフレは貨幣的現象」だけれども、ミクロで考えればデフレは中央銀行だけの所管ではないのである。

ところが、国会議院運営委員会における所信聴取の席で、黒田氏は「デフレ脱却に向けて、やれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたい」と述べている。また2%の物価上昇率の達成期限は、「個人的には2年くらいを念頭に置く」とも言った。とってもポジティブ、なのである。

次ページ所信聴取では雄弁に語った黒田氏だが…
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT