(このひとに5つの質問)中川文雄 近鉄百貨店社長

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(このひとに5つの質問)中川文雄 近鉄百貨店社長

近鉄百貨店が反撃ののろしを揚げた。増床・改装が相次ぐ4年後の「大阪百貨店戦争」に向け、旗艦である阿部野本店の売り場面積を日本一にするという。はたして、その勝算は。(『週刊東洋経済』11月24日号より)

以前の計画は半端だった 好立地生かし日本一に

1. 大阪・天王寺に誕生する日本一のタワービル(2014年完成予定)に旗艦の阿倍野本店が入居し、売り場面積が日本一になります。

親会社の近畿日本鉄道が建設する地上54階建てビルの14階までのフロアに入居する。売り場面積は10万平方メートルと、阿倍野本店は単館で日本一の規模となる。現店舗は約70年経ち老朽化も激しく、お客様は買い物がしづらくなっていた。ちょうど近鉄がターミナル駅の改革をやるという話があり、百貨店としても協力することになった。

2. キタの阪急・阪神、ミナミの大丸、そごう、高島屋と11年をメドに増床・改装が相次ぎ、「大阪百貨店戦争」と注目されています。阿倍野・天王寺地区はそこから取り残された印象があり、今回の発表には意外感があります。

阿倍野本店は当初の部分改築の予定から全面改装、そして今回のタワービルの入居へと計画が急展開してきた。百貨店戦争の狭間で、地盤沈下させてはいけない。これまでの計画は中途半端で、戦争には勝てない内容だった。

3. キタとミナミに比べると、天王寺は商圏規模などで見劣り感が否めません。

それは違う。大きくなれるポテンシャルを持っているから、わが社も大きくなろうとするのだ。天王寺は近鉄、JRのターミナル駅がある。商圏規模は大阪府南部と東部、奈良県の人口が約660万人、駅周辺商圏の居住者が約16万人となり、キタ(梅田)の9万人、ミナミ(難波)の6万人と比較すれば、そのポテンシャルがわかるはずだ。

ただ、物販施設そのものが少なく、商業施設の集積が遅れていた。10年には地区全体の再開発事業も完成する。ようやくそのポテンシャルを発揮できるようになったということだ。

4. 15年2月期に連結営業利益を現在の51億円から160億円以上、単体の営業利益率も1・6%から4%以上にする目標を発表しました。

改装が本格化する09年から14年まで、阿倍野本店の売り場面積は4割減少する。この間の売り上げをどうしのぐかが問題。上本町店や奈良店を増床や改装する一方、効率化も図りたい。本店中心の収益構造から脱却したい。既存店の効率化向上と不採算店舗の改善に取り組めば、営業利益率は目に見えて向上するはずだ。とにかく赤字店をなくす方向で努力したい。

5. 日本一となる新店舗でのビジネス展開はどうなりますか。

物販業態が多様化する一方、エステや健康など非物販の消費も増大している。ここを狙っていく。物販と非物販と連動できるような商品開発や事業開発を行い、近鉄らしさを消費者に提供したい。

(撮影:ヒラオカスタジオ)

なかがわ・ふみお
1940年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。64年近畿日本鉄道入社。72年近鉄百貨店に移籍。2004年から現職。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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