尖閣問題、中国の主張には2つの誤りがある なぜ、今になって強硬姿勢を見せているのか

✎ 1〜 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 41 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

中でも中国軍は、日本によって奪われていた領土を取り戻すことをもっとも強く主張している機関であり、「日本が南シナ海の仲裁裁判に不当に関与したので懲らしめてやろう」という気持ちが強く出たのかもしれない。軍に比べ中国外交部の地位は相対的に弱いといわれており、今回の事件についてはこのような内部事情も影響している可能性がある。

しかし国際社会においては中国の内部事情がどうであれ、中国のそのような特異な考えは認められない。日本が仲裁裁判に関与したなどという裁判批判は荒唐無稽だ。

国際法にのっとって解決することが必要

日本が放棄した島嶼や岩礁の帰属問題は国際法にのっとって解決することが絶対的に必要だ。各国が国際法を無視して取り合い合戦を始めれば新帝国主義的争いとなる危険さえある。

日本政府が「国際法と国内法令に基づいて、今回の事件について冷静に、かつ毅然とした態度で処理する」という方針で臨んでいるのは正しいと思う。また、米国との情報交換などもよく行っているようだ。

一方、中国のフラストレーションにも注意が必要だ。中国は、南シナ海の問題、あるいは尖閣諸島の関係で不満が高じると、ほかの問題で代償を求めてくることがありうる。外相会談が開催できない原因を日本側に押し付けてくるようなことはすでに始まっているようだ。

残念ながら、共産党による事実上の一党独裁の中国では、分野あるいは案件をまたがっての政策調整は比較的簡単にできるが、民主主義国家では困難だ。そのため中国政府がとりうる政策手段の幅は日本などよりはるかに広く、時として日本の対中外交は困難に陥るが、日本としては安易な妥協は禁物であり、国際法に従って問題を処理することが、結局は中国にとっても利益であることを粘り強く説得していくことが肝要だ。

また、領土問題に関する主張の奥には、日本などとは比較にならない危険な政治状況がありうるということを常に念頭に置いておくことが必要だ。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事