日銀新総裁、黒田氏の3つの選択肢 国際派財務省OBの手腕が試される
前例踏襲でなく前例否定
日銀に批判的な黒田氏と岩田氏だけに、従前の政策を引き継いで「現状維持」はないだろう。市場では臨時会合招集を予想する向きすらある。少なくとも4月3~4日に予定される金融政策決定会合で追加緩和の方策が議論される可能性が高い。前年度比プラス0・9%としている14年度の物価予想を、同月26日に公表する「経済・物価情勢の展望」で上昇修正し、デフレ脱却への強いコミットを示すことも想定される。
実際の選択肢は大きく三つ。まずは長期国債の買い増し。「最適なスピードを超えてアグレッシブな買い入れをすると、一時的に長期金利が下がったとしても、何らかのきっかけで反転上昇することも起こり得る」(白川総裁)との従来の慎重な姿勢を一転し、買い増しピッチを加速することが考えられる。
日銀が「極めて異例」と認めて行っているETF(指数連動型上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)などのリスク資産の買い入れ対象をさらに広げるかもしれない。
さらには金利の引き下げ。政策金利はほぼゼロだが、民間銀行が日銀に持つ預金口座の利息(付利、現行0・1%)にはわずかな下げ余地がある。「短期金融市場の金利が極限的にゼロに近づくと、市場の流動性が低下する」と白川総裁が常々否定してきた付利撤廃をどうするか。いずれにしろ、“白川理論”を否定することになるだろう。
むろん、金融政策は魔法の杖ではない。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「期待を変えていくには金融政策以外にも、さまざまな政策を総動員する必要がある」と指摘する。麻生財務相も「金融緩和だけでは十分でなく、残り二つ(財政と成長)がないとうまくいかなかったという例が過去にある」と認めるところだ。
目下、市場はかたずをのんで日銀の金融政策を見守っている。新総裁は就任早々、市場との対話力を試される。
(撮影:梅谷秀司、尾形文繁)
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