日銀新総裁、黒田氏の3つの選択肢 国際派財務省OBの手腕が試される

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日銀に批判的な2人

安倍晋三首相は総裁の条件として、「国際金融のサークルの中のインナーとなり得る能力も重要」とし、麻生太郎財務相は「組織を動かしてきたことのない人は不向き」と述べていた。黒田氏は国際金融局長から財務官(1999~2003年)を経て、05年からはアジア開発銀行総裁を務めている。国際金融界の人脈と組織運営の経験を持っており、いずれの条件も満たしている。

今年2月のメディアのインタビューに対し黒田氏は、日銀が政府との共同声明に盛り込んだ物価目標2%について、「できるだけ早期に実現するというのは、非常に画期的で正しい」と評していた。財務官時代に寄稿した雑誌の論文でも、「今やるべきは、デフレ期待を破壊するような物価安定目標の設定」としている。

かつて日銀が政府の反対を押し切ってゼロ金利を解除した00年8月の決定についても、著書で「財務官であって国内金融政策に関与する立場にはなかったのですが、『ゼロ金利政策』解除には反対すべきとの立場をとりました」と記している。導入当初の量的緩和政策にも、「一気に当座預金残高目標を引き上げるということをしないで、ただ時間を徒労していた」と緩和の踏み込みが不十分だったとしていた。

誰であるにせよ、積極的な金融緩和論者が次期総裁であることは織り込み済みの日銀関係者も、「どういう考えを持たれているのかは話してみないと……」と言葉は少ない。

一方、副総裁候補の岩田氏は、安倍首相が設置した金融有識者会合のメンバーの一人。一貫して日銀の金融政策を批判し、インフレ目標を導入した積極的な金融緩和の必要性を主張してきた。つまり、「今回の人選が、安倍さんの日銀への考えを裏付けている」(政府筋)。

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