円高の"紙風"でしぼんだ製紙業界の再編機運

業界4~6位のこじれきった関係で鳴り潜める

大手2強をみても昨年来、首位の王子ホールディングスは7位の中越パルプ工業との資本・業務提携の拡大や、三菱製紙とのバイオマス発電等での協業を推進。2位の日本製紙も8位の特種東海製紙と板紙分野で合弁を決めるなど、同業下位との連携の動きはあった。ただ、今のところ、「お互いにメリットのあるところでの提携関係」(王子HD)に過ぎず、本体どうしの経営統合に進むといった機運は見出しにくい。

さらに、足元の製紙各社の業績が、意外にも好転し、「生き残りをかけた再編」への機運が盛り上がりにくくなっている。

大手・準大手が軒並み営業増益に

製紙各社の直近2016年4~6月期(第1四半期)の営業利益は、他の主要製造業よりも順調だ。前年同期の営業利益に比べ、業界首位の王子HDは17%増、2位の日本製紙は28%増と2ケタの伸び。以下、3位のレンゴーが134%増、4位の大王製紙が4%増、6位の三菱製紙が黒字転換(前年同期は営業赤字)と、いずれも改善している(5位の北越紀州製紙は8月12日発表)。

製紙業界は、大手も準大手・中堅も、東日本大震災が起きた2011年以降、冴えない業績が続いてきた。2012年末からは、円安が急激に進んだこともあり、海外から輸入する製紙原料や燃料費が膨張。各社は相次いで印刷用紙や情報用紙など洋紙の値上げを断行。が、構造的な需要低迷と価格競争が続く中、「印刷用紙については、すでに前回の値上げ分が、この春までの価格下落で帳消しになった」(王子HD)という。

にもかかわらず、製紙各社の4~6月期の営業利益がおしなべて良好だったのは、「円高」という、神風ならぬ“紙風”が、製紙業界に吹いたからだ。

「原燃料(原料と燃料)費が落ち着いていることが大きい」。ある製紙会社幹部は、今の事業環境について「いい時期」と言い切る。為替は今年2月以降、急激な円高に反転。原油安も重なり、原燃料費の重しが、一気に軽くなった。

原燃料費軽減による4~6月期の営業利益に対する増益要因は、王子HDで34億円、日本製紙で49億円にも上る。一方で、売価ダウンや需要減による減益要因も、王子HDで39億円、日本製紙で45億円あったが、コストダウン策や海外事業改善などで、営業利益ベースでは王子HDが前年同期比27億円増の185億円、日本製紙が同12億円増の55億円と、それぞれ利益を積み上げた。

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