円高の"紙風"でしぼんだ製紙業界の再編機運 業界4~6位のこじれきった関係で鳴り潜める

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縮小

実は、製紙各社の海外売上比率は、海外進出で先行した王子HDや三菱製紙でもせいぜい3割前後。日本製紙、レンゴー、大王製紙などでは1割前後に過ぎない。輸出や海外事業の比率は、電機や自動車産業に比べ小さいため、円高のデメリットは限定的。むしろ原燃料費軽減という形で、円高はメリットのほうが大きい。

国内市場の縮小は確実、再編は不可避か

「紙」の中でも「板紙」は、物流や流通現場で多用される段ボールの原材料であるため、安定業績が見込める。業界3位のレンゴーはこの板紙と段ボールが事業の中心のため、今2016年度は営業増益率53%と、製紙各社の中でも大幅増益を計画している。

一方、「洋紙」は、国内市場が年々縮小していくことが確実だ。少子化でノートや教科書といった学用品向け需要が細る。デジタル化で紙メディアの雑誌や書籍、新聞の需要が減る。「第三極」などの業界再編の動きも、「洋紙」の国内市場縮小をいかに工場集約などの効率化でカバーするか、という発想の延長線上にあった。

大手も準大手も、国内市場縮小への対策として、海外でのM&Aや現地法人設立に力を注いでいる。直近でも、王子HDによるニュージーランドのパルプ会社買収や、日本製紙による米国の紙容器向け原紙大手買収、北越紀州によるカナダのパルプ会社買収、大王製紙によるインドネシアでのベビー用紙オムツ工場新設などがある。

ただ、各社とも、国内に大規模な製紙工場を抱える以上、国内市場縮小から目を背け続けるわけにはいかない。円高の“紙風”でようやく一息ついた格好の製紙業界だが、中長期的には業界再編も含めた対応策は不可避といえそうだ。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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