デジタル情報、手で触れられる時代へ

石井裕・MITメディアラボ副所長が予測する近未来

未来を予測するには、人口動態や自然環境、エネルギー需給のほか、科学技術の進化への見通しも不可欠だ。デジタル分野の最先端研究で知られる米国マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの石井裕副所長に、デジタル社会の未来像を聞いた。

――デジタル社会の未来のキーワードの1つとして、「タンジブル・ビット」を提唱されています。

タンジブル・ビットは、私が17年前にMITメディアラボに来てから研究を進めた、デジタル情報と人間とのまったく新しいインターフェースの概念です。これによって、未来社会は大きく変わっていきます。

そもそもデジタル情報と人間との関係を考えるうえでの出発点は、情報をいかに表現するか、ということです。現在、情報の表現はノートブックPC、タブレット、スマートフォン、いずれもすべて「ピクセル」(輝点)としてガラス上で行われています。

ただし、ピクセルには物理的な実体がありません。そのため、マウスやキーボード、タッチスクリーンなどのリモートコントロールを通してしか触れられない。それに対し、情報に実体を与え、そろばんのように直接触れられるようにする概念が「タンジブル(触れられる)・ビット」です。

――具体的にはどのような研究成果が挙げられますか。

たとえば「サンドスケープ」があります。箱の中に置かれた砂の3次元形状をコンピュータが読み取ることで、手を通した「感触」とコンピュータの計測が同時にできます。これによって、ランドスケープデザイン(景観デザイン)が容易になるのです。

サンドスケープ。3次元形状の砂を利用することで、人間の感触とコンピュータの計測を同時に可能にした

ここで言う「感触」とは、現実世界の「緊張感」にも置き換えられます。遠隔ビデオ会議のような空間ではなく、同じ物理空間にいると、自分と他者との間に緊張感が生じる。いずれ、そうした感覚もタンジブルなインターフェースを介して伝えられるようになると期待しています。

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