「在宅勤務」はむしろ従業員に厳しい制度だ 使う側には「覚悟」も必要になる

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その頃、私はワーキングマザーで構成された営業組織のマネジメントを担当していて、この働き方についても、意見を聞かれたりしたものでした。実は、私はマネジメントする側にいたので、この働き方ではマネジメント難易度があがる、とびびったものです。

メンバーの心身のコンディションを感じ取り、コミュニケーションをとり、仕事を差配しながらチームが最大のパフォーマンスをあげられるようにしていくことは、管理職として重要な仕事のひとつ。いくらITが発達しても、何気ないやりとりで目を合わせ、「あ、何かあった顔だ」と感じるのは、対面にかなうわけがないと思っていましたし、「後でちょっといい?」と声をかけて話を聞くのだって、一緒の空間にいるからこそすぐできることだとも思ってきました。

私の場合は、目の届かないところで働くメンバーたちの、いわゆる「さぼり」を心配する、ということではなく、メンバーの心身の状況を察知する難しさを心配していたのでしょうね。

確かに在宅勤務のメリットは大きい

一方で働く母としては、「自宅で仕事できれば、こどもたちが学校から帰ったときに、『おかえり』と言っておやつを出してあげられるな」と思い、とても魅力的な働き方だとも思いました。こどもが宿題をする横で仕事ができる。通勤時間を気にせず、こどもたちに「行ってらっしゃい」と声がかけられる。資料を印刷しながら、洗濯物が干せる。学校行事にだって、細切れの時間で参加しやすくなる。何より、こどもの急な発病のときも、存分にそばにいながら仕事ができる。ちゃんと成果を出せば評価だってされるでしょう。

特に子どもが病気の時などに、看護休暇や有休を使って会社を休んでいるはずなのに、私自身は元気なので、ばんばん仕事の連絡が入ったり、納期の迫った仕事が待ったなしに降ってきたりして、「これじゃ、ゼンゼン休暇じゃないじゃん」と感じていたので、在宅でも「仕事をした」と認められることに魅力を感じずにはいられませんでした。あなたの今の心境と同じだったのでしょうね。

しかし、会社からすれば、モバイルで仕事をする環境を整え、セキュリティもばっちり担保しなければならないし、労働時間の管理をどのようにしていくのかも検討しなければならない。成果のとらえ方・評価の仕方にも工夫が必要になり、人事考課の仕組みや制度の改定も必要になるでしょう。マネジメントスタイルが変わるわけなので、マネジャーに求められる要件も変わり、マネジャー教育や意識改革も大きなテーマになるはずです。たくさんの準備が必要で、それらに応えてくれるメンバーとの信頼関係も必要になってきます。

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