名目輸出額では輸出減の生産抑制効果は分からない
ここで、輸出、輸入の動向を、名目値と実質値で比較してみよう。
名目値(季節調整系列)で見ると、7~9月期から10~12月期にかけての輸出、輸入の成長率は、それぞれ、マイナス0・3%、3・0%だった。実質での成長率は、マイナス3・7%、マイナス2・3%だ。
名目と実質の差は、価格効果(円安効果と外貨建て価格の変化の効果)だ。輸出は実質で3・7%と減少したのに対して、価格効果(大部分が円安効果と見られる)で3・4%引き上げられ、その結果、名目では0・3%の減に留まった。輸入は、実質では2・3%減少したが、円安効果と外貨建て価格の上昇効果で、名目値では3・0%増加した。価格効果は、5・3(=3・0+2・3)%だ。このうち円安効果が3・4%とすると、外貨建て価格の上昇効果が1・9%あったことになる。
貿易統計の数字は名目値なので、円安下では、そこに表われる輸出減より実質の輸出減は大きい。国内生産に影響するのは、実質輸出だ。したがって、貿易統計の輸出額の数字だけを見ていると、国内生産に対するマイナス効果を過小評価することになる。貿易統計を見る場合には、前回そうしたように、輸出数量指数をも見ることが重要だ。
輸入についてはどうだろうか。10~12月期では、実質輸入が減ったにもかかわらず、円安効果と外貨建て価格の上昇のため、名目輸入額は増えた。つまり、輸入増大のGDP抑制効果は、貿易統計の輸入額の数字だけを見ていると、過大評価してしまうことになる。ただし、名目輸入額の増加それ自体にも意味がある。なぜなら、それが、国内生産のコストアップ要因になるからだ。それは、製造業の利益を圧迫するだろう(これについては、後で述べる)。
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