ルンバはスマートホームの「指揮者」になるか ロボット掃除機が束ねる次世代IoTとは?
多様なセンサー、IoT機器の情報を取り込みながら、各製品の利用履歴を参照しながら、ユーザーに先んじて家の中を快適に保つ方法を推論して制御していく。
もちろん、まだまだ構想段階だ。どのようにIoT機器と連携するのか。何らかのオープンスタンダードを使うのか、イニシアチブを取っていくのか? それともプロプライエタリ(市販ソフト)に独自製品を展開していくのか。アングルCEOは「まだどのように他製品と連携を取っていくのか、具体的な方法はない」と認める。
しかし「家の形や何がどこに置かれているかを推論するためのマップ情報」を取得可能というロボット掃除機の特徴を、IoT時代において自らの価値だと見てコンシューマ市場に事業をフォーカスした決断は興味深い。
現時点において、ロボット掃除機の分野で大きなシェア(日本市場では60%以上)を持つ同社は、掃除機ロボットの機能やAIの賢さ、センシング技術(センサーで計測すること)の正確性などで確かに先行している。
しかしながら、スマートフォンアクセサリメーカーだったANKERが、2万円を切るロボット掃除機を発売したように、今後この分野も細分化と低価格化が進んで行くだろう。その中でアイロボットはしばらくの間、先行者利益を享受できるだろうが、それも永遠ではない。
IoT時代がやってこようとしている今、自社が持っている価値をその先につなげ、得意な技術を基本に事業を伸ばしていくための大胆な決断だと感じた。
自社が得意な技術領域に絞り込み、それを他社が想像しない領域に持ち込んでいくやり方は、たとえばダイソンなども得意だ。
英国の家電メーカーであるダイソンがヘアドライヤーを発売し「美容家電に参入」と報じられたが、創業者のジェームズ・ダイソン氏の話を聞くかぎり、美容家電市場に参入したいから作ったのではなく、よりよい掃除機を開発するために生まれた派生技術を、さまざまな分野で応用することによってできあがった製品だと思う。
それは小型インペラー(羽根車)を使った掃除機などの技術を、羽根のない扇風機として応用したり、そのときに開発したエアマルチプライヤー技術をヘアドライヤーに使ったりといったことだ。ほかにも彼らはハンドドライヤーなどの製品も持っているが「自分たちが得意な」要素を持っている分野に絞って製品開発を行っている。
荒唐無稽でも独自性のあるアイデアが評価される
かつてダイソンのエンジニアにインタビューした際、彼は次のように話していた。
「私たちはダイソンに入社すると、まず創業者であるジェームズ・ダイソンに、“モノ作りに携わる人間としてこうあるべき”という哲学をたたき込まれます。ジェームズは、たとえ世界で認められた優秀な製品であっても、つねに改良を加え続けていく日本のモノ作りに敬意を払っています。開発する製品はつねにオリジナリティがなければダメです。他人のアイデアに同調する者、後を追うものは評価されず、たとえ荒唐無稽でも独自性のあるアイデアが評価されます」
自分たちにしかできないこと。すなわち、きちんと得意な技術を基盤としたうえで、独創的なアイデアを乗せ、つねにユーザー指向のモノ作りを行う。文章で書けば実に当たり前のことなのだが、大きな会社ではなかなかそれができない。
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