自動掃除機で独走状態、「ルンバ」強さの秘密 アイロボットCEOの描く「10年戦略」とは

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「ルンバ」で知られるアイロボットが、日本市場攻略を本格化させる。ルンバは世界50カ国以上で1000万台超を売り上げる、ロボット掃除機のパイオニア。3年ぶりの新型となった「800シリーズ」は、店舗での販売で日本市場を優先。世界に先駆けて3月1日に日本の店頭に並べたのだ。

「ロボットの発明はエキサイティングと思うかもしれない。でも最も重要で解決しなければならない問題のいくつかは、とても退屈だ」(アイロボットのコリン・アングルCEO)

800シリーズは設計を根本から見直すことで、吸引力を5倍、掃除能力は50%引き上げた。新たに特殊素材のローラーを採用しており、従来のブラシと比べて髪の毛が絡まりにくくなっている。「あらゆるアイデアを検討した過程で生まれた試作品は何百台にも上る。開発には6年かかった」とアングル氏は胸を張る。800シリーズはマイナーチェンジにとどまらず技術革新にもこだわっており、ルンバの牙城を崩すハードルは一段と上がっている。

アングル氏は、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」と言う。開発テストでは、畳の上をはだしで歩いて、細かい粒状のゴミが感じられないかをチェックした。700シリーズから導入されたゴムのバンパーは、壁にぶつかっても傷がつきにくくするための工夫。高性能なフィルターを搭載し、排気の清潔さにも配慮している。いずれも日本市場のニーズを取り入れた機能だ。

アバターに期待

アイロボットは、1990年にマサチューセッツ工科大学で人工知能を研究していた科学者3人が設立した。「退屈、不衛生、危険な仕事から人々を解放する」という理念を掲げ、軍事用ロボットを複数開発して技術を磨いた。遠隔操作で潜入調査できる「パックボット」は、福島第一原子力発電所でも活躍している。

ただ競争環境は厳しい。日本が得意とする産業用ロボットのほか、米グーグルが開発する自律運転車もロボットの一種。さらに米アマゾンは、小型無人飛行機を使った商品配送サービスを2015年にも開始する計画だ。

あらゆる業界でロボットの実用化が進む中、アイロボットは家庭用とリモートプレゼンス(遠隔存在)の分野で成功を目指す。期待を寄せるのが、多目的ロボットの開発プラットフォーム「エイヴァ」。いわゆるアバター(自分の分身)の移動式ロボットで、離れた場所から仕事ができるのが特徴だ。企業では出張の移動時間や費用が削減できるほか、すでに世界50以上の医療機関で、医者が遠隔地からの診断に使っている。

エイヴァは家庭内に入ると、執事のような働き方もできる。「家の中で独立した多くのロボットが活動し、それらをエイヴァのようなロボットが制御・統制する姿を私は描いている」(アングル氏)。長期的には家事に限らず、介護ロボットも視野に入れる。

アイロボットには、10年先までの開発パイプラインがある。さらに家事のチャートマップを作り、頻度が多くて嫌われる家事を優先的な開発対象にしているという。

日本メーカーは「単なるちりとりロボットで、中身はおもちゃ」と判断し、ルンバをライバル視してこなかった。人気に火がついたことで、シャープや東芝も追随したが、ルンバの国内ロボット掃除機シェアは65%と圧倒的。日本メーカーも腰を据えてロボット化に取り組まないかぎり、多くの商品分野で苦戦を余儀なくされるかもしれない。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2014年3月8日号 核心リポート03)

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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