激化する海外一流トップスクールへの受験競争
1つには海外のトップスクールに留学したくても、以前よりアジア諸国のライバルとの競争が激化し、入学が困難になっているということがある。以前はアジアからの留学生というと金銭的にも日本人が圧倒的に優位だったが、購買力平価換算ではもはや台湾と韓国と日本が同じ現在、留学するような金持ち層に関して言えばアジア各国間の経済力の差がなくなり、競争が激化している。
また「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が終わり20年が経つ中で、MBAのトップスクールから日本へ割り当てる“枠”も減少した(実際の話、ここで書くのは恐縮だが、一昔前の日本の商社や銀行から枠で派遣されているトップスクールMBAの中には、英語もろくに話せないのに何がハーバードや、という人も結構いた)。
加えて長期化する不況も相まって企業側が人材教育コストを削減させる中、留学費用の支援枠も減少している。驚いたことに伝統的に海外留学の奨学金を出していた基金(たとえばロータリー)も、MBA留学生などへの補助金を打ち切っているのだ。
日本の産業構造上、日本企業を海外に導き成功させるグローバル人材への需要はますます高まっている。ユニクロやローソンといった一昔前は代表的な内需企業だった会社が、海外勤務人材や外国人社員を大々的に公募しているのも周知の事実だ。しかし他の国々の留学生との競争は激化しており、また社会的および家計的な資金的サポートも先細っている。それが“トップスクール留学”に限って言えば日本人留学生が減少している原因ではなかろうか。
日本では、冒頭に登場した学費に糸目をつけない金持ちのご両親も減り、おまけに急増する高齢者層の福祉負担が、若手エリート層の留学予算を奪い去っている。瞬間風速で実現してあっという間に廃止に追い込まれた“子ども手当”などのバラまき型若年層支援ではなく、日本の未来を背負って立つエリート層向けの“重点的国家的海外留学支援”があってしかるべきなのでは、と思う今日この頃である。
追伸:ちなみに日本にまだまだ裕福な中産階級が多かった時代には、単に日本の受験戦争に失敗した子を(言い方は悪いが)おカネさえ払えばだれでも行ける学校に“留学”させるケースも多かった。国内大学が全入時代に突入し家計の経済的余裕もなくなった今、“このタイプの留学生”が減っていることは、特に問題視しなくてもよいと思われる。肝心なのは能力もやる気もあって次世代の日本を担える逸材なのに、社会的サポートが足りないどころか社会的負担が大きくて、潰される若者が増えているのでは、という問題である。
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