歴史問題ではトーンダウンするはず
野田氏と安倍氏が違うのは、野田氏はあからさまに中国・韓国の反感を買おうとしなかった点だ。確かに、野田氏は尖閣諸島のうちの3島の購入に踏み切ったが、それは状況がもっと悪化するのを防ぐためだった。
これとは対照的に、自民党の総裁選挙および総選挙中の安倍氏の演説やコメントには、日本の隣国、とりわけ中国に対する敵意が垣間見えた。米国の視点からすると、そのようなコメントは迷惑だ。なぜなら、それは日本の隣国との関係を混乱させ、もっと重要な課題に関して、米国がこの地域の国々すべてをうまくまとめ上げようとする努力に水を差すからだ。
同様に、安倍氏は河野談話と村山談話の見直しは行わないと述べる一方で、自らが新たな談話を発表すると言っている。もし安倍氏の談話が中国および韓国で反日感情に火を付けたり、または、日本が安全保障関係を徐々に強化しようと努めている国々(東南アジア諸国、オーストラリア、インド)との関係を冷却したりすることになれば、その緊張緩和のためにエネルギーを浪費することになり、ほかの課題に対する米国の取り組みにとって妨げとなる。
米国は、日本の保守派の首相と協力することはできる。しかし私は、もし問題が生じるとしたら、それはその首相が、隣国との関係を悪化させるような政策や声明を打ち出す場合だと思う。米国は、日本が中国を含む隣国と良好な関係を保つよう願っている。私は、安倍氏はこの点をよく理解していて、日米同盟の良き仕切り役であることを示すため、歴史などの事柄に関する自らのレトリックをトーンダウンするはずだという感触を得ている。
――安倍首相はTPPへの参加に前向きな姿勢を示すでしょうか。
それは安倍首相本人に聞かないとわからないが、首相が難しい判断を迫られていると察することはできる。
安倍氏が党首を務める自民党の中にも、日本のTPP参加に強く反対する議員がいる。そういう議員たちは、安倍氏がTPPの交渉に参加すると表明したら自民党は農業票を失うのではないか、と不安に思っている。この点は重要だ。なぜなら、参議院選挙が7月に予定されており、安倍首相としては、さまざまな政策課題の実現に向けた法案を成立させるために、過半数を確保したいからだ。TPP交渉参加は、伝統的に自民党に投票してきた有権者を動揺させかねず、過半数の確保を危うくする可能性がある。
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