タイヤ大手、好業績の強さと脆さ 天然ゴム価格急落と円安に沸く

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13年も各社の業績は好調に推移しそうだ。今度は円安が追い風となる。12年は1ドル=80円、1ユーロ=103円前後の円高水準が続いたのに対し、各社は1ドル=90円、1ユーロ=120円を前提に、海外販売の拡大を見込んでいる。海外での現地生産・現地販売の進展度合いによって、真水の円安効果の割合に差はあるものの、基本的には円安による恩恵は大きい。

ブリヂストンは、現地生産・現地販売が進んでおり、見かけ上の円安効果が大きいとは言うものの、13年に営業利益で積み上げる計画の960億円のうち、750億円を円安効果と見ている。輸出比率が高い下位メーカーでは、真水の円安効果がより大きく出てくる見込みだ。

好調が想定される日系タイヤ各社だが、懸念材料はもちろんある。そもそも円安傾向が終了し、天然ゴム価格が反転上昇すれば、元の木阿弥だ。

数量伸び悩みと価格競争が懸念材料

ただ、より現実的には数量の伸び悩みと価格競争が懸念材料だ。アジアなどの新興国市場は好調な伸びを見込めるものの、主戦場である日米欧市場は大幅な伸びは見込みづらい。

堅調な米景気に、欧州景気の下げ止まり感もあり、また、日系各社は円安で価格競争力が高まっているとはいうものの、基本的に成熟市場では生産能力が過剰になっており、天然ゴム価格下落も相まって、価格競争が進まないとも限らない。

原料と円というダブル安に支えられた好業績だけに脆さも秘めていそうだ。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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