政府・日銀の政策発動が「不発に終わる」懸念 神経質な市場環境、観測記事の扱いに要注意

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27日の日経平均株価は、28兆円の経済対策への期待から4日ぶりに反発した(写真:Natsuki Sakai)

市場が注目した米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り、政策金利(現行0.25〜0.5%)は据え置かれた。イエレン議長の会見がなかったことから、市場関係者は声明文の内容から、今後連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の方向性を見極めようとしたが、9月利上げの可能性が残されたといえる。

今回の会合では、英国のEU離脱決定による米国経済への影響を見極める必要があると判断したとみられる。ただし、国内の景気認識は上向き修正した。政策維持の決定は昨年12月の利上げ以降、5会合連続となったが、FRBは6月時点で年2回の利上げを想定しており、市場では少なくとも年内に1回の利上げがあるとみているようだ。

米国経済は上方修正だが利上げは容易ではない

FOMC声明では、米国経済について「緩やかに拡大した」とし、「加速したようだ」とした6月の前回声明から判断を上向きに修正。労働市場についても「6月の雇用の伸びの急拡大によって強化された」「この数か月、労働力の活用が幾分増した」との見方を示し、前回の「回復が鈍化した」から上方修正した。また「物価は短期的には低インフレが続くが、中期的には上昇率が目標の2%に達する」との見通しを維持した。

英EU離脱への具体的な言及はなかったが、最近の金融市場の鎮静化を踏まえ、当面のリスクは後退したとの認識を示した。国際経済・金融情勢については、前回同様、物価動向とともに「緊密に注視する」と強調。国内情勢を考慮すれば利上げしたいのだが、国際情勢や株式・為替市場への影響を考慮すれば、利上げは容易ではない。FRBは今後も厳しい判断を迫られることになりそうだ。現状では年内利上げは困難と考えている。

日本サイドだが、安倍首相が来週にも28兆円の経済対策を発表するとしている。しかし、その中身に対してはすでに失望の声が多く上がっている。旧来型の内容であること、予算が今年度と来年度にまたがることもあり、数値ほどの短期的な景気刺激効果は得られないとの見方で一致しつつある。閣僚からは「政府が決めた刺激策に日銀も呼応するはずだ」と圧力をかけているが、日銀ができることも限られており、このままでは今回の政府・日銀による政策発動は不発に終わる可能性が高まっている。

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