ドル高円安は、まだ続く可能性も 市場動向を読む(為替)

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さて、上述したように、実効レートは様々な通貨に対する総合的な強弱を表している。従って、通貨によって割安・割高度合いが異なる。実は円は米ドルに対してはさほど割安ではない。米ドル/円相場は均衡水準に近いと言える。なぜなら、米ドルも過去の水準と比べると、現状水準は割安だからである。米ドル/円相場の先行きを考える上で、こうした現状を知っておくのは有意義だろう。

米国は物価下落方向、ドルは対円で上昇の可能性

例えば、米ドルは割安であるから、何らかの理由で割安感を修正し、上昇する余地は大きい。つまり、米ドル/円相場の上昇余地も大きいと言える。また、日本のインフレ率が上昇を始めると、円は割安感が修正される。円にはさらなる下落余地が出ることになり、これも米ドル/円相場の上昇余地が大きいことを意味することになる。

一方、円も割安であるから、何らかの理由で割安感を修正するような出来事が発生すれば、米ドル/円相場は下落する。また、米国のインフレ率が上昇すれば、米ドルの割安感が修正されるので、これも米ドル/円相場の下落余地が大きくなることを意味する。

もっとも、JPモルガンのNYのエコノミストは、米国の物価はどちらかと言うと年央に向けて下落していく方向で予想している。つまり、もし米ドルが現状水準で動かないのであれば、米ドルの割安感がさらに増していくことになる。これらの要素を総合的に見ると、米ドル/円相場は上昇余地が出てくる可能性の方が高そうである。

佐々木 融 ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト

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ささき とおる / Tohru Sasaki

2023年12月から現職。日本銀行で調査統計局などを経て国際局(当時)為替課で為替市場介入を担当し、ニューヨークで米国金融市場分析も行った。2003年4月からJPモルガン・チェース銀行でFXストラテジストや市場調査本部長を務め、金融市場を調査・分析してきた。著書に『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)。

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