「ポケモン旋風」に沸く日本株の「落とし穴」 日銀だけ見ていると方向を見失う危険性

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日米ともに大規模な量的緩和を続けてきた結果として、準備預金は、米国では法定準備預金の15倍強、日本では約30倍程度にまで達してきている。

こうしたなか、米国では株式市場と不動産市場の価格が上昇基調を見せる一方、マネタリーベース(=準備預金額+貨幣流通量)は、準備預金が減り貨幣流通量が伸びる形で減少してきている。これは、これまでFRBに積み上げられてきた準備預金の一部が取り崩され、市中に流れ始めたことを示唆するものだ。

バブルを生み出しかねない危険な資金が市場へ

法定準備預金を上回る超過準備預金は、現在の経済活動に使われていなかった資金、換言すれば現在の経済状況を維持するのに不必要な資金である。つまり、市場に流れ込んだ超過準備預金の一部は、資産バブルを生みかねない危険な資金だということでもある。

これまで何回も「Behind the curve (政策が後手に回ること)」のリスクに言及してきたイエレンFRB議長にとって、こうした状況は無視しえないものであるはずだ。もし、イエレンFRB議長が資産バブルを懸念しているとしたら、金利を引き上げることで超過準備預金の流出にブレーキをかけようとするはずである。

しかし、市場の半分以上が年内利上げなしと見込んでいるなかでの利上げは、市場に不必要な動揺を与えかねない。市場との対話を重視するFRBが、黒田日銀のように市場を驚かせるような愚行に出る可能性は極めて低い。

では、市場に不必要な動揺を与えないで利上げするためにはどうするか。昨年12月に利上げを実施した時と同様に、市場金利を徐々に上昇させ、「市場追随型の利上げ」に持ち込むのが一番安全である。

昨年12月のFOMCで利上げに踏み切った際には、直前の10月のFOMCから市場金利は1年国債が0.35%、2年国債が0.25%、3年債が0.29%上昇し、0.25%の利上げを完全に織り込む形で利上げを迎えることができた。

これに対して直近の市場金利は昨年12月のFOMC時点と比較して1年国債でマイナス0.13%、2年国債でマイナス0.25%、3年国債でマイナス0.43%と、軒並み低下してしまっており、利上げを織り込むどころか、利下げ期待が高まっているといえる状況になっている。

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