成功する人は「無益な感情」を捨てている 2000年前に「老子」が指摘した真実

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たとえば柔軟が過ぎると、ただのお調子者になってしまうし、謙虚が過ぎると、下手に出すぎて卑屈になってしまいます。これではまわりの信頼など得られません。そうならないためには、まずしっかりと自分を確立しておくことが望まれます。『老子』も、そのことを当然の前提として、柔軟であれ、謙虚であれと語っています。

知識は人に迷いを与える

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『老子は』こんなことも言っています。

学問を修める者は日ごとに知識を増やしていくが、道を修める者は日ごとに減らしていく。減らしに減らしていったその果てに、無為の境地に到達する。そこまで到達すれば、どんなことでもできないことはない。天下を取ろうとするなら、無為に徹しなければならない。へたに策略を弄すれば、天下は取れない。

学問によって知識を獲得することは、一人前の社会人として世の中に立っていこうとするからには、いつの時代でも必要なことです。特に『老子』の生きた時代は、ごく一部の人々に学問や知識が占有されていました。だから、それらを身に付けることの意義は、現代とは比較にならないほど重かったに違いありません。

ところが『老子』は、そういうなかにあって、きっぱりと学問や知識を否定しようとするのです。なぜでしょうか。次の2つの理由があります。

①人間が本来持っている素朴な良さが失われ、人を騙したり陥れたりする狡知(こうち)が発達していく

②つまらない知識にとらわれて、ああでもない、こうでもないと、迷いばかり深くなっていく

特に現代のように、情報量が多い時代には、『老子』の主張にもそれなりの説得力があるように感じられるのではないでしょうか。

『老子』はこのように「下手な策略は、百害あって一利なし」「あるがままに生きよ」ということをわれわれに教えてくれます。ぜひ参考にしてみてください。 

守屋 洋 著述家

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もりや ひろし

昭和7年、宮城県生まれ。東京都立大学中国文学科修士課程修了。中国古典に精通する第一人者として、著述・講演などで活躍。研究のための学問ではなく、現代社会の中で中国古典の知恵がどう生かされているのかを語り、難解になりがちな中国古典を平易な語り口でわかりやすく説く。SBI大学院で経営者・リーダー向けに中国古典の講義を続けるなど、広く支持されている。著書に、『菜根譚』 (PHP)、『孫子の兵法』 (三笠書房)、『中国古典「一日一話」』 ( 三笠書房)、『〈新訳〉菜根譚』 (PHP)、『孫子に学ぶ12章』 (角川マガジンズ)、『「貞観政要」のリ-ダ-学』 (プレジデント社)など多数。

 

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