医薬品ネット販売、「解禁」の先 ケンコーコム後藤社長に聞く

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――安全に販売するための要件が上げられたときに、ネットには満たせないものはない?

きちんと議論を重ねれば、クリアできると考えています。もちろん要件を増やしてどんどんハードルを上げていくことはできますが、同じハードルを対面販売の店舗もクリアしなければなりません。そうすると店頭も含め、医薬品販売そのものができるのか怪しくなってくる。そこまでのルールを、国として事業者に要求する意味はあるのでしょうか。

――今後、一般用医薬品販売の現場はどう変わっていくべきでしょうか。

事業者も制度も、もっと患者目線にならなければと思います。大衆薬のマーケットが縮小していること自体、消費者に愛想を尽かされていることを物語っています。患者がほしいと思う薬を買えない世界を作ってしまったのだから、当たり前ですね。

セルフメディケーションを進めて医療費を削減するためには、購入方法などの選択はある程度患者にゆだねて、その中で薬剤師などの専門家がフォローしていく形にしていかなければなりません。情報通信技術をはじめとして、ここ数年でいろんな技術が進歩しました。これをうまく活用しながら、より付加価値を感じてもらえる販売方法にしていくべきではないでしょうか。

流通全体がめまぐるしく変容する中、医薬品流通は変わり切れていなかったのかもしれません。かつて医薬品流通の中心だった「パパママ薬局」は、20年くらい前には“かかりつけ薬局”として非常によく機能していました。ただ、取扱品目が少ない、販売価格が高いなど欠点も多い。そこに10年前くらいから、ドラッグストアが台頭してきます。価格はぐっと安くなって医薬品へのアクセスは容易になりましたが、地域に根ざした“かかりつけ”のよさは薄らいでしまっています。

――今の時代に合った医薬品販売の在り方は、どんなものでしょうか。

今挙げたような、両者の利点を併せ持つような体系を作っていくことが望ましいです。患者1人1人の要望を聞きながらナビゲートすることと、患者が医薬品にアクセスしやすいような環境を作ること。この両方の実現を目指すときに、情報通信技術はとても有効に働くと思います。セルフメディケーションを進めれば、国にも医療費削減という大きなメリットがあります。

新しいルールが整備されれば新規参入も増え、ケンコーコムにとってはライバルが増えることになります。でも、それは歓迎すべきこと。お互いに切磋琢磨しながら、業界全体で進化していければと思っています。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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