JR東海・東日本、「新型」新幹線はこう変わる 2020年メドに量産、JR東とは方向性に違い

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一方、JR東日本の近年の新幹線の新型車両は、過去5年間を振り返っても東北新幹線E5系、秋田新幹線E6系、北陸新幹線E7系などバラエティに富んだ車両が営業投入されている。JR東日本の車両開発の歴史をさかのぼれば、大量輸送を想定した2階建てのE1系、E4系といった車両も登場している。

東海道新幹線だけを抱えるJR東海に対して、JR東日本は高速走行が可能な東北新幹線、勾配の多い北陸新幹線、本来は在来線である秋田新幹線、山形新幹線といった具合に、路線によって抱えている課題がまったく違う。それが、車両設計の違いとして具現化されたといってよい。

JR東日本が抱えている課題の一つが東北新幹線の高速運転だ。現在東北新幹線は宇都宮~盛岡間で時速320キロ運転を行なっているが、盛岡以北は整備新幹線区間であり時速260キロに減速してしまう。これではせっかくの新幹線も宝の持ち腐れだ。

盛岡以北で高速走行試験を実施

高速走行を念頭に開発された東北新幹線E5系(撮影:尾形文繁)

そんな中、JR東日本は2014年に東北新幹線・盛岡~七戸十和田間で深夜の時間帯に時速320キロの走行試験を実施した。整備新幹線区間は最高時速260キロという前提で建設されているため、時速320キロの走行試験が周囲の環境にどのような影響を与えるか。「騒音などのデータ収集が目的」とJR東日本は説明するが、将来の時速320キロ運転を念頭に置いていることは間違いないだろう。

さらにいえば、JR東日本は過去には高速試験車両を開発し、東北新幹線区間で時速360キロの走行試験を行なっていたが、最終的に現行の時速320キロに落ち着いた。ただ、JR東日本は今も時速360キロ運転の旗印を下ろしていない。

E5系の営業運転開始は2011年。次期モデルについて語るのは時期尚早だが、もし数年後に東北新幹線の次期モデルが登場するとしたら、時速360キロを実現できる車両かもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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