「LINEするより電話したい」  彼女がLINEをやめたワケ

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\(^o^)/ 分散するルールと文法

LINEのトークやメールなどテキストコミュニケーションには、音声や対面での会話とは異なる面倒さもある。例えばこんなメッセージが届いたとき、あなたはどういう意味にとらえるだろうか。

「試験\(^o^)/」

「試験うまくいった。バンザイ!」ととらえる人もいるだろうし、「試験ダメだった。人生オワタ」と読む人もいるだろう。「\(^o^)/」は、人がバンザイして喜んでいる表情でもあり、ネットスラング「人生オワタ」を象徴する「お手上げ」の表情でもある。文字だけでは伝えられない機微を表すはずの顔文字が、かえって意味を分散させ、コミュニケーションを困難にすることもある。

加えて、テキストに関するルールやマナーは人によってまちまちだ。「絵文字を使ったメッセージは許せない」という人もいれば、「絵文字がなければ怒っているように見える」と絵文字を多用する人もいる。「ぁ」「ぉ」など小文字を多用する人、小文字を多用する人をバカにする人、「(笑)」を使う人、「www」の人、「(笑)」や「www」が嫌いな人、「ジェームズ」のスタンプが好きな人、ジェームズを毛嫌いしている人……。

筆者はできるだけ相手のルールやマナーに合わせて会話したいと思うタイプだが、LINEやFacebookが一般にも普及し、テキストで交流できる人が増えるにつれ、共有している文法が減り、身動きが取りづらくなってきた。「この人は絵文字OKだっけ?」「『wwww』って書いて、意味が通じるかな?」などと考え込んでしまい、テキストでの交流に面倒くささを感じることも増えてきたのだ。

「拝啓」で始めて時候のあいさつを書き、「敬具」で締めれば万事OKだった手紙のほうが、むしろ効率的に情報を伝えられた気すらする。もっとシンプルに、音声だけでリアルタイムに情報を伝えられる電話なら、声色や口調を読み取ることで、誤解が少ないコミュニケーションができるのかもしれない。

「リアルに戻ってきてる」

LINEをやらなくなった彼女は最近、「電話したり、実際に会ったりしたい欲求が増えた」という。

今や、どのツールを使えば確実に相手に届くかどうか分からないし、テキストや絵文字で正確に気持ちを伝えるのは難しい。相手に確実に届き、文法の違いを意識せずに交流できるのが、電話や対面でのコミュニケーションなのかもしれない。

「今、すんごいリアルに戻ってきてる気がして。時間と距離を超えるのがネットだけど、結局、リアルを近づけてる気もしますね!」

岡田 有花 フリーライター

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おかだ ゆか / Yuka Okada

1978年、兵庫県生まれ。京都大学教育学部卒。IT系ニュースサイトITmediaの記者、Webベンチャーnanapiの編集者を経てIT・Web分野を中心に取材、執筆するフリーライター。

ITを切り口に、人の心、そして社会の有り様にまで踏み込み、取材される側の信頼を獲得してこそ書ける記事を執筆する。また、時に見せる体当たり記事の潔い姿でも名高い。

著書『ネットで人生、変わりましたか?』
(2007年、ソフトバンククリエイティブ)も刊行している。
Twitter @yukatan

 

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