ゾゾタウン、朝令暮改の真相 ポイント還元率引き上げを撤回

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昨年9月に実施された初のリアルファッションイベント「ZOZOCOLLE(ゾゾコレ)」は2日間で1万人が来場した

今回の決算説明会で注目されたのが、ポイント還元率を1%へ再び戻した”朝令暮改”の理由だ。前回10月30日の決算説明会で前澤社長は、「ユーザーアンケートを元に顧客還元を強化する」「他社の追随があった場合はさらに還元率を引き上げる」と強気発言をしていたが、結果的にわずか3カ月で旗を降ろす結果となった。

前澤社長は早期に方針転換を決断した理由について、「一部出店ブランドから実店舗の顧客流出懸念があるとお叱りの声をもらった」とした。

ポイント還元分の負担はスタートトゥデイが持つが、ゾゾタウンに出店する490のブランド(12年12月末時点)にとっては、ゾゾタウンで常時1割の値引きがされていることになる。実店舗での衣料品販売に影響が及びかねないため、スタートトゥデイに抗議したケースがあったという。

群雄割拠のアパレルネット通販

スタートトゥデイにとっても出店ブランドによる受託販売事業が売上高の6割を稼いでいるだけに、こうした取引先の声を無視できなくなったというのが、ことの顛末のようだ。

アパレルネット通販業界は、各社が力を入れる有望分野だ。1月30日にはネット通販を含めた独自サービスを強化しているNTTドコモが、中堅のマガシークに大口出資すると発表。昨年5月には楽天が同じく中堅のスタイライフに資本参加したほか、アマゾン日本法人は昨年末にグループ初のアパレル専門プレスルームを構える気合いの入れようだ。

前澤社長は来期以降の業績について「15~20%の自然成長を目指したい」とするが、このような環境下で達成は容易ではないだろう。説明会では具体性を伴った成長戦略は聞かれず、来期業績は上場来初の通期減益の可能性もある。「(同じアパレルネット通販でも)付加価値で勝負する」と語る前澤社長。次の一手が命運を分ける。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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