日本国民の選択「与党圧勝」に米国が抱く不安 安倍政権への信頼感は高いが…

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仮に安倍首相と自民党が、憲法改正、とりわけ9条の改正に強引に取り組むようなことになり、さらに米大統領選の結果、米国がより孤立主義を強めることになれば、現在の良好な日米関係は一気に悪化しかねない。これは、米国からの独立政策を望んでいる日本の右派の背中を押すとことになるだろう。

もっとも日本に関する専門家たちは、今回の選挙を受けて憲法改正の機運が一気に高まるとは考えていない。安倍首相が選挙中に、この問題に言及しなかったことや、選挙後の同首相の注意深い発言は、日本の有権者が憲法改正の必要について依然、相当に懐疑的であるという現実を示しているからだ。

今後の日本の動きをどう見るか

「民進党と日本共産党を中心とした反安倍勢力は、憲法改正を選挙の争点にしようとしていた。憲法9条の改正や集団的自衛権に対する国民の根強い反発を、安倍政権を倒す戦略として利用しようと目論んでいたが、結局は打ち負かせなかった。安倍首相が選挙期間中、自民党の憲法改正案の争点を巧妙にずらして、代わりに経済政策と、野党の選挙協力におけるイデオロギーの矛盾に、話の焦点を当てていたことが背景だ」と、ジョージ・ワシントン大のモチヅキ教授は指摘する。

「今後あり得るのは、安倍首相が今回の勝利を受けて、国会で憲法改正に関する審議を始め、公明党が受け入れることのできる改正案を作ることだ。これは、安倍首相が安全保障関連法を成立させるために使った手口と酷似することになるのではないか。安倍首相は9条を改正することはできないかもしれないが、日本を憲法改正に正式に導く初めての首相になる可能性がある」(モチヅキ教授)。

米政府の安全保障専門家たちは、基本的には安倍首相を受け入れており、同首相による長期政権が安定的な日米関係を築き上げてきたと考えている。しかし、安倍首相を支持する専門家たちでさえ、日本政府が歴史修正主義の道を用心深く歩もうとしていることに警鐘を鳴らしている。

「憲法改正などは国内で異論が多いだけでなく、近隣国を挑発する可能性が高い」とデミング元首席公使はいう。日本の国内政治と外交政策の両方を混乱させないためにも、安倍政権には慎重に、透明性を持って前進することが望まれる。
 

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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