「今回の選挙結果をアジアの近隣国との関係という観点から見ると、もっとも問題含みなのが中国、次に韓国だ」とデミング元首席公使は話す。「今後の行方は、中国や韓国の政府が今回の結果をどう受け止めるかによる」。すでに中韓メディアでは、選挙の結果を受けて日本の軍国主義が再び話題になり始めている。
「安倍政権が中韓それぞれと関わり続け、歴史的、領土的問題を刺激しそうな言動を避け続けることが重要だ。今後、自民党右派が修正主義的な政策を推し進めることになれば、その分、中国や韓国との関係が悪化することは避けられない」(デミング元首席公使)。
辺野古移設計画は代替案検討の可能性も
もう一つは、沖縄問題である。島尻安伊子沖縄担当相の決定的な敗北は米国にとっては大きな痛手であり、米軍基地の辺野古移設への反対を表明している伊波洋一元宜野湾市長の勝利は、県内の移設反対勢力をさらに活気づけることになる。これまでも、公的には移設を進めることで両国政府は合意をしているが、米政府関係者間では代替案を検討する必要性も話し合われてきた。今回の結果を受け、より真剣に代替案に関する議論がされることになるのは間違いない。
「もし安倍首相が強制的な手法を用いて、辺野古移設を前に進めようとすれば、沖縄での反感はさらに強まり、嘉手納基地のような、沖縄で戦略上より不可欠な軍事資産を米国が使用できなくなるおそれが生じかねない」と、米ジョージ・ワシントン大学で日米関係を教えるマイク・モチヅキ教授は話す。
「執拗に今の計画に固執するよりは、日米両政府で代替案を模索し始めるべき。その代替案とは、沖縄における海兵隊の規模を縮小しながらも、アジア太平洋地域の安全保障問題のすべての課題に対処するために、より効果的かつ効率的に米海兵隊を配置するものでなければならない」
数十年間基地問題に取り組んできた、デミング元首席公使も代替案に賛成する。「辺野古移設計画はしばらく『延命維持装置』につながれていた状態だが、今回の選挙結果は致命的な打撃になるかもしれない。安倍政権は今回の件を、米国が持続可能かつ有効的な日本における基地の在り方や、具体的な移設場所について改めて検討する機会と捉えたほうがいいだろう」(同首席公使)。
非公式にではあるが、米国の防衛専門家たちは、すでに横須賀や三沢など本州にある空・海軍の基地の規模を拡大することによって、中国や北朝鮮に対する抑止力を強化する方向を模索し始めている。
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