コマツ、社長交代に見える脱カリスマの布陣 名経営者・坂根正弘会長が相談役へ

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だが、今回、坂根会長は取締役から外れコマツの経営の中枢から去る。名経営者が長く経営の最前線で辣腕を振るうケースも少なくないが、コマツの新しい経営体制は、それとは逆の「脱カリスマ」を目指す布陣のように見える。

実は坂根会長自身、「トップのカリスマなどに頼ってその場その場を乗り切る経営体制が理想ではない」と、過去にメディアのインタビューなどで答えている。コマツには、坂根会長と野路社長が中心となってまとめた、「コマツウェイ」という守るべき価値観がある。この軸こそが、決断に迷ったときの拠りどころになる。前任者が上から口出しをするのではなく、社長がこの軸に従って自分で行動する。

脱カリスマは段階的に

ただ、脱カリスマは一気にではなく、段階的に進めることになりそうだ。今回、野路社長は、役員人事を司れる代表権を持ったまま会長に就く。大橋体制が軌道に乗るまで、裏方でしっかり支えられるようにするための措置だろう。坂根会長も会長就任時は代表権を残していたが、後に外れた経緯がある。

世界的な競争が厳しさを増す中で、「脱カリスマ」を目指す今後のコマツの全権を担う大橋氏とはどんな人物か。

野路社長は、大橋氏にバトンを渡そうと決断した理由に、「英語力が抜群でグローバルリーダーとして最適」であることを挙げた。大橋氏は入社後に米スタンフォード大学大学院に留学し、コマツの米国子会社の社長を務めるなど、海外経験を豊富に積んでいる。

大橋氏の英語力が特に期待されるのが、情報通信技術(ICT)を活用した新しい商品開発の加速だ。コマツは無人ダンプを実用化するなど、ICT分野で先行してきた。しかし、近年は競合もICT化を進めているほか、付加価値の低い汎用機では新興メーカーがシェアを伸ばしている。そのため、ICT分野を中心に欧米の開発パートナーとの情報交換をより密にし、競合からのリードを広げるのが急務となっているのだ。

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