グーグルOB起業家の華麗なるエグジット 新世代リーダー 福山誠、上村康太
幸い、起業した11年8月当時、IT業界全体に「スタートアップ」を応援しようという気運が高まっていた。大手IT企業が、各種のインキュベーションプログラムを立ち上げていたのだ。シンクランチも、KDDIが執り行うスタートアップ支援制度「KDDI∞Labo」第一期参加企業に選出された。
「ここに参加できたおかげで、事業のマネタイズの仕方やファイナンスの方法について学べたし、実際に第三者割当増資で資金調達をすることもできました」(上村氏)
「リスクは驚くほど低い」
スマホのアプリやネットサービスは今、明らかに乱立傾向だ。学生など、おたく気質のアプリ開発者が、“内輪受けアプリ”を続々作っては、ビジネスそっちのけで内輪受け戦争を繰り返す。そのせいか、スマホの世界には“ゾンビ・アプリ”があふれ返っている。あるインサイダーによると、App Storeにあるアプリの約3分の2が、実にダウンロード数ゼロの死に体なのだという。
つまり、2000年代のネットベンチャーと比べて現在は、簡単に「スタートアップ」ができるようになっているのだ。昔のベンチャーはサーバ一つ借りるだけでも数百万円がかかった。しかし、今はクラウドがあるため、以前サーバーにかかったコストは数千円単位で済むこともある。それだけではない。
「起業や事業運営のノウハウがいろいろ共有されており、プログラミングの学習コストもすごく下がっているので、事業をやりながら学ぶことができる。今のネットサービスは玉石混淆と言いますが、淘汰されるものは淘汰されるので、早くに失敗できるのは逆にメリット。ダメだったら早く辞めて次に挑戦できますから」(福山氏)。
上村氏も、「先が見えない=ヤバいの時代じゃない。トライアル・アンド・エラーが可能になったのはいいこと。僕らが取ったリスクなんて、グーグルでの出世くらいじゃないですかね」と屈託ない。
反対にサービスのニーズがあれば、フェイスブックやツイッターなどを介してあっという間に拡散される。「今、ビジネスを始めることのリスクは、驚くほど低い」(福山氏)と言う。
「グーグルを辞めて、後悔したことはありません。たとえどんな結果になっても、今の年齢でこんな経験をしている人はそうはいない。それは個人のキャリアで考えても、絶対にマイナスにはならないと思っていました」(上村氏)。
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